
忘年会に新年会など、お酒と一緒に塩辛いおつまみを食べる機会が多くなる季節です。お正月には、おせち料理や味付けのしっかりとした食べ物が食卓に並ぶことが多く、油断をするとアルコールと塩分過多で、朝起きたら顔がむくんでいるという人もいることでしょう。健康のために減塩を考えているけれど、実際に自分が日ごろどの程度の食塩を摂取しているのかを知らない人も多いのではないでしょうか。食塩と健康との関係について説明し、効果的な減塩方法について考えてみたいと思います。
日本人の“本当の”平均的な食塩摂取量は?
日本人の1日あたりの食塩摂取量は、令和元年(2019年)国民健康・栄養調査で、男性10.9g、女性9.3gと報告されています。2004年の調査では、男性12.1g、女性10.5gでしたので、15年間で1g以上の減塩が進んでいるように見えます。
これに対し、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日あたりの食塩摂取量の目標量を男性7.5g未満、女性6.5g未満と設定しており、目標量との間に大きな差があることがわかります。
ここまでが、減塩について一般に説明されることが多い内容ですが、実は日本人の減塩はほとんど進んでいないのではないか、という報告があります。国民健康・栄養調査は食事記録をもとに摂取栄養量を計算するのですが、調査の性格上、間食の記載漏れや食事量の過少申告があることが知られています。
手間はかかるものの、24時間に排出された尿を全て集めて、尿中に含まれるナトリウムからより正確な食塩摂取量を推定する方法があります。この方法で20~69歳の健康な男女計760人を対象に実施した調査では、1日の食塩摂取量は男性で約14g、女性で約12gと、食事調査を大きく上回る結果が報告されており、日本人の減塩は実はあまり進んでいないと考えられるわけです。
食塩摂取量の実態と目標値に大きな差があることの問題は、目標値よりも少ない塩分量に調整した食事は味気なくて、とても食べられないものになってしまうことです。「普段の食事の約半分に減塩してください」といわれ、我慢して続けられるのはごく一握りの人でしょう。
1日7.5gや10g以下などの数値目標を立てるのは否定しませんが、まずは無理なく継続できるレベルの減塩を進めることが大切だと考えます。
そもそも食塩摂取量が多いと何が問題なのか
食塩は、塩化ナトリウムに塩化マグネシウムなど微量のミネラルを含んだものです。健康上問題になるのは塩化ナトリウムのナトリウム部分です。ナトリウムは体にとって重要なミネラルなのですが、体の中で濃度が一定に保たれており、食事からのナトリウムが多いと水で薄める必要があり、体内に余計な水をため込むことになります。
ナトリウムは腎臓から排出されますが…
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管理栄養士
なりた・たかのぶ 1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書「新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK」(内外出版社)を執筆。共著に「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」(メタモル出版)、監修として「子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ」(オレンジページ)などに携わっている。