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スマホやテレビを見せることに罪悪感…親たちのモヤモヤ、解消のヒント

白井沙良子・小児科医/小児科オンライン所属医師
 
 

 新型コロナウイルスの影響がしぶとく残る、今日このごろ。気温も低く、外遊びもおっくうになりがちな季節ですよね。自宅で過ごすと、どうしてもテレビやタブレットでの動画視聴の時間(スクリーンタイム)が長くなりがちです。スクリーンを子どもに見せることになんとなく罪悪感を覚えつつも、日々の忙しい育児を乗り切るためには欠かせなくなっている――。そんなモヤモヤを抱えている親御さんは少なくないでしょう。スクリーンタイムの健康への影響を踏まえながら、上手に付き合っていくための方法を探ります。

コロナ禍で近視や視力低下が増えている

 スクリーンタイムと聞いてまず気になるのが、目への影響ではないでしょうか。国内で新型コロナの流行が始まった2020年に実施された一斉休校の後、子どもたちの視力の低下が顕著だったという報告があります。小学校の視力検査において、視力が0.7未満の子どもが前年の17%から23%に増加していた地域もありました。

 子どもたちの視力の推移が分かる資料に、文部科学省「学校保健統計調査」があります。新型コロナ流行前の19年度までと流行後の20年度以降で調査方法が異なるため、単純比較はできませんが、小・中・高校生における裸眼視力1.0未満の割合は、20年度以降、それまでと比べて高い水準となっています。

 小学1年生のうちは男女ともに、約8割の子どもが裸眼視力1.0以上ですが、学年が上がるにつれて減り、中学3年生では約4割にまで下がっています。近視についても同様で、学年が上がるごとに近視が進むケースが多いと報告されています。

 もともと近視はコロナ禍以前から世界中で割合が増えており、さらに20歳以下に進行しやすいという特徴もありました。新型コロナ流行後は学校の授業や日常生活などでスクリーンを見る時間が増えていることで、より近視の増加に拍車がかかっているのです。

スクリーンタイムの影響はさまざま

 「病院の待合室で、子どもにおとなしくしていてほしいから、スマホでYouTube(ユーチューブ)を見せていたら、目の前に『スマホに子守りをさせないで!』というポスターを見つけてしまい、気まずかった……」

 「テレビはなんとなく良くないって分かっているけど、テレビを見せないと家事が進まない……」

 「イヤイヤがおさまるから、ついYouTubeを見せちゃうんですよね……」

 外来などで、こうした親御さんの悩みをよく聞きます。スマホやテレビを見せていることに、なんとなく罪悪感を覚えつつも、日々の忙しい育児を乗り切るには、もはやスマホやテレビは欠かせないアイテムになっている。そんな親御さんは少なくないと思います。

 たしかに日本小児科医会も、スマホに「子守り」をさせず親が関わって遊ぶことを推奨していますし、世界保健機関(WHO)も「2歳未満には、テレビ・ビデオ・ゲームなどの画面は推奨されない」「2~4歳では1日1時間未満が目安だが、少ないほうが良い」と提唱しています。なお、5~17歳でも1日2時間未満が目安とされています。

 この理由としては、スクリーンタイムが増えるほど、言語障害や、集中力の低下、多動の傾向などが報告されているからです。たとえば、2322人の5歳までの子どもを対象にした研究では、1日あたりのスクリーンタイムが2時間以上の子どもは、30分未満の子どもと比べ、外在化問題行動(反抗的な言動など他者に攻撃的な心理・行動の状態になる)や、不注意などADHDの診断基準を満たす確率が高かったという報告があります。

 また、2歳以下の子どもでは、スクリーンタイムが長いほど、睡眠時間が短くなることが分かっています。特に生後6カ月未満の子どもでは、スクリーンタイムが1時間増えるごとに、睡眠時…

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小児科医/小児科オンライン所属医師

しらい・さよこ 小児科専門医。「小児科オンライン」所属医師。IPHI妊婦と子どもの睡眠コンサルタント(IPHI=International Parenting & Health Insutitute、育児に関するさまざまな資格を認定する米国の民間機関)。慶応大学医学部卒。東京都内のクリニックで感染症やアレルギーの外来診療をはじめ、乳幼児健診や予防接種を担当。2児の母としての経験を生かし、育児相談にも携わる。***小児科オンラインは、オンラインで小児科医に相談ができる事業です。姉妹サービスの「産婦人科オンライン」とともに、自治体や企業への導入を進めています。イオンの子育てアプリより無料で利用できます。詳細はこちら