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教育レベルの高い人ほど不正確な情報を信じてしまう?

大須賀覚・がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授
 
 

 投稿サイトの「ツイッター」や動画投稿サイトの「ユーチューブ」などを利用し、誰もが気楽に情報発信できる時代となりました。同時に、医療や健康についての発信も急激に増加しています。

 ネットには、参考になる有益な情報がある一方、正確ではない情報も多くみられ、そのことが社会問題にもなっています。新型コロナウイルスやがんについての情報も同様です。不正確で危険なアドバイスを信じて、健康被害にあう方もいます。

 あなたは大丈夫でしょうか?

教育レベルの高い人ほどだまされやすい

 では、どのような方が科学的根拠(エビデンス)のない医療情報を信じてしまうのでしょうか?

 これまでに検証を行った研究はいくつかあります。そこから不正確な情報を信じてしまいがちな方の特徴がいくつか明らかになっています。

 アメリカの研究では、教育レベルの高い人ほど、科学的根拠のないがん治療を受けてしまう傾向が強いとの報告があります(*1)。これは日本でも同様です(*2)。

 この結果を意外に感じる方もいるかもしれません。

 勉強をたくさんして大学や大学院を出ていれば、情報を見極める能力があって、正確な判断ができるだろうと思われるからでしょう。しかし、実際のデータが示すところは、意外にもその反対なのです。

 それはなぜでしょうか?

自信は時に判断の邪魔をする

 まず考察を先に進める前に、一つ指摘しておくべきことがあります。

 教育レベルが高い人ほど高収入である割合が多く、収入が高いと金銭的な余裕があるので、さまざまな治療を試せます。そのことが、科学的根拠が証明されていない治療を選ぶことにつながる可能性も否定できません。

 ただ、理由はそれだけではありません。

 私もさまざまな患者さんに出会ってきましたが、たしかに教育レベルの高い方が怪しい治療に傾倒してしまう姿もたびたびみてきました。中には理系の大学院を卒業しているのに、荒唐無稽(むけい)な“トンデモ説”に傾倒してしまっている方もいました。

 そこで感じたのは、…

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がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授

筑波大学医学専門学群卒。卒業後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面し、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。Twitterアカウントは @SatoruO (フォロワー4万5千人)。