
新型コロナウイルス感染症による重症感染者数や死者数が頭うちになったことを受け、3月13日からはマスク着用が個々人の判断にゆだねられるようになりました。私たち若年シニアはこの状況に際し、どう向き合っていけばよいでしょうか。答えは、「次に備えるべし」です。
感染症による死者 世界で毎年1500万人
人類はこれまでの長い歴史のなかで、次から次へと登場する病原微生物と闘ってきました。その度に免疫力を強化して対抗してきました。次に登場するかもしれない微生物に対して、私たちはこれから先も免疫防御力をうまく整備する必要があるのです。
世界に目を向けると、毎年6000万人が死亡し、その4分の1にあたる1500万人近くが感染症によって命を落としています。その多くが発展途上国や紛争地域の住民で、低栄養による免疫能の低下が原因で、腸管感染症、呼吸器感染症、マラリア感染などを起こします。また、乳幼児や小児に多くみられることが特徴的です。
一方、日本を含む先進国においても、低栄養はまれではありません。胃腸の病気やがんと闘っている人、高齢者の中には食欲が低下したり食生活が偏ったりして、たんぱく質やビタミンといった免疫能の維持に重要な栄養素が足りない人が増えているのです。
免疫能の維持のために最も重要な栄養素はたんぱく質です。免疫防御機構の仕組みについてたんぱく質との関連から説明します。免疫防御機構については記事「知識を身につけ新型コロナに立ち向かう!」を参考にしてください。
病原生物と闘う「免疫グロブリン」の働きとは
免疫グロブリンは、細菌やウイルスなど病原生物をたたく抗体として働くたんぱく質で、血液中はもちろん唾液や消化管から分泌される粘液や消化液に存在しています。免疫には、体内に侵入した病原生物など好中球やリンパ球といった細胞が排除する「自然免疫」と、体内で作られた抗体によって排除する「獲得免疫」があります。私たちが新型コロナウイルスの予防策としてワクチン接種を受けるのは、そのウイルスに対して有効な免疫グロブリンを作り、獲得免疫を得るためです。
免疫グロブリンにはIgA、IgG、IgM、IgEなどの種類があり、体重が60kgの人で1日あたり約6~8gが体内で作られています。IgAは粘膜から分泌され、呼吸器、口…
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同志社大学教授
よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。