
著名人ががんで亡くなると、しばしばメディアに登場したコメンテーターや司会者が「早期発見、早期治療が大切ですから、がん検診を受けましょう」などとコメントします。「がんは早期発見、早期治療が大事」とはよく言われる言葉です。しかし、すべてのがんに早期発見、早期治療が有効であるか?というと、答えは「NO」です。今回はがん検診によくある誤解や受けた方がよいがん検診について、医師主導ウェブサイト「Lumedia(ルメディア)」のスーパーバイザーを務める勝俣範之・日本医科大武蔵小杉病院教授が解説します(この記事は渡辺清高・帝京大医学部腫瘍内科病院教授がレビューしました)。
医師志望者でも誤解しがちな検診の有効性
以下は、第106回(2012年)医師国家試験で出題された問題(注1)です。答えはどれでしょうか?
集団に対してある癌(がん)の検診を行った。検診後に観察された変化の中で、検診が有効であったことを示す根拠はどれか。
a 検診で発見されたその癌の患者数の増加
b 検診で発見されたその癌の患者の生存率の上昇
c 集団全体におけるその癌の死亡率の低下
d 集団全体におけるその癌の罹患(りかん)率の低下
e 検診に用いられた検査の陽性反応適中率の上昇
「早期発見で見つかったがんは、生存率が良い」という話を聞いたことがあるかもしれません。そう考えると、正解は“b”のように思うかもしれませんが、違います…
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日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授
1963年生まれ。88年富山医科薬科大学医学部卒業。92年から国立がんセンター中央病院内科レジデント。2004年1月米ハーバード大生物統計学教室に短期留学。ダナファーバーがん研究所、ECOGデータセンターで研修後、国立がんセンター医長を経て、11年10月から現職。専門は内科腫瘍学、抗がん剤の支持療法、乳がん・婦人科がんの化学療法など。22年、医師主導ウェブメディア「Lumedia(ルメディア)」を設立、スーパーバイザーを務める。