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「麻疹に感染したかも」 その時どうする

谷口恭・谷口医院院長
2016年9月、関西国際空港従業員の麻疹感染がわかり、空港利用者に注意を呼びかける文書が表示された=井川加菜美撮影
2016年9月、関西国際空港従業員の麻疹感染がわかり、空港利用者に注意を呼びかける文書が表示された=井川加菜美撮影

 報道によりますと、関東地方で麻疹の感染者が相次いで報告されたことを受け、5月16日、加藤勝信厚生労働相が記者会見で「疑われる症状があった場合、必ず受診前に医療機関に連絡し、公共交通機関の利用は控えてほしい」と述べました。では、医療機関に連絡さえすれば何もかもうまく事が運ぶのでしょうか。(特に初期の)新型コロナウイルス流行時のように「診察を拒否される」「検査をどこで受けていいか分からない」「治療が受けられるか不安」といった問題は生じないのでしょうか。今回も私見を織り交ぜながら、麻疹に感染したかもしれないときの対処法を紹介していきたいと思います。

2016年の麻疹流行時の反省

 私が院長を務める太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の開院以来17年の歴史で、麻疹で最も混乱したのは2016年でした。関西国際空港の職員に相次いで感染者が見つかり、さらに大阪市立大(現大阪公立大)医学部附属病院の職員の感染が報道されました。これを受けて「自分も感染したかもしれない」と考えた人からの電話が急増しました。同時に「ワクチンを打ちたい」という問い合わせも殺到し、谷口医院の電話回線はパンクし通常の診療に支障がでました。

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谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。