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インスリンに何が? 糖尿病を防ぐための処方箋

米井嘉一・同志社大学教授

 糖尿病は、インスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働き(耐糖能)が低下し、高血糖が慢性的に続く病気です。その中で、2型糖尿病は、遺伝的要因に「運動不足」と「食べすぎ」といった好ましくない生活習慣が重なった結果、発症します。このような生活習慣を持っている日本人は大変に多いことが分かっています。「食べすぎ」「運動不足」の人数を合わせると、少なく見積もっても3000万人以上になるでしょう。この人たちは、少しずつ「糖尿病」に近づいているのです。正常な人が2型糖尿病に至るまでに「インスリンに何が起きているのか」を知り、「インスリンを守る方法」を考えてみたいと思います。

8割近くが「運動不足」

 スポーツ庁による2020年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、週1日以上運動・スポーツをする人の割合は、20歳以上の男女で平均59.9%でした。運動の内容については個人差が多く、実際に「運動不足」を「感じる」(「大いに感じる」と「ある程度感じる」)とする割合は79.6%と極めて高いのです。

 「食べすぎ」の人の割合についての報告はいろいろありますが、身体活動によっても適正摂取カロリーが異なるので、食べすぎかどうかの見極めは簡単ではありません。「食べすぎ」の生活への影響は体重に表れるので、今、太り気味の人は「食べすぎ」と言えます。19年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)では、肥満者(体格指数BMI≧25㎏/㎡)の割合は男性33.0%、女性22.3%であり、この10年間で、男性は増えつつあります。太り気味の人を含めると、その数はもっと増えます。

運動不足が影響

 インスリンは、…

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同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。