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若返りホルモン 分泌を促す三つの習慣

米井嘉一・同志社大学教授

 血糖を下げるホルモンはインスリンだけ――。そう習った方は多いかと思います。実は、インスリン以外に血糖を下げるホルモンがあります。それが「インスリン様成長因子」(Insulin-like growth factor=IGF)です。

 IGFにはIとIIの二つのタイプがあり、IGF-Iは別名「ソマトメジンC」とも呼ばれています。私がこのIGF-Iホルモンに出合ったのは1991年。高度の低血糖に悩む患者さんの治療を通じて、IGFを産生する肝臓がんを世界で初めて見つけた時でした(雑誌Liver 1992;12(2):90-93に発表)。

 それまでは、肝臓はさまざまな物質を生成し、毒物を代謝する化学工場として、また胆汁を分泌する外分泌臓器として理解していました。その後、肝臓はホルモンを産生する重要な内分泌臓器であることがわかり、「若返りホルモン」の研究を始めるきっかけになったのです。

※文末に読者プレゼント(「若返りホルモン」に関する本)もあります。

インスリン抵抗性を高める原因ではない

 IGF-Iは、インスリンが効きにくくなり、血糖が高めになった時(インスリン抵抗性が高まった時)に、血糖を下げる「お助けホルモン」として作用します(インスリン抵抗性については記事「インスリンに何が? 糖尿病を防ぐための処方箋」を参照)。2型糖尿病の予備軍や内臓肥満の増え始めといった「インスリン抵抗性」が高まった時に肝臓から分泌されます。

 この状態の人が生活習慣を改善して食事療法と運動療法を実践すると、インスリン抵抗性が良くなるとともに、それまで高めの数値だったIGF-Iは、お助け不要ということで下がります。そのためIGF-Iは誤解されやすく、悪玉扱いにしている研究者もいます。

 IGF-Iは、インスリン抵抗性が高まる原因では決してありません。内臓肥満の原因でもありません。大切な「若返りホルモン」として位置づけられるはずなのに、少し損しているホルモンなのです。

IGF-I(ソマトメジンC)とは

 一言で表すと、IGF-Iは「成長ホルモン(GH)のメッセンジャー」です。GHは睡眠中に分泌され、子どもから大人に成長する時に重要です。中学生男子が年間10cm以上も背が伸びる…

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同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。