定期寄稿・伊藤達也氏

森友・加計問題が提起したのは、政と官の在り方だ

伊藤達也・元金融担当相
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伊藤達也氏=小川昌宏撮影
伊藤達也氏=小川昌宏撮影

公務員は国民の財産

 公務員は国民の財産である。彼らが、その専門性を向上させ、誇りを持って社会に貢献できるよう体制を整備することは、政治家の重要な責務である。先進各国においても、政治主導の下で、公務員の専門性をどのように発揮させるかについて、真剣な検討が行われ、公務員の能力向上が試みられている。日本だけは、こうした動きに大きく後れを取っていると言わざるを得ない。

 財務省による公文書の改ざん、防衛省の日報問題、裁量労働制に関する不適切なデータ問題など、行政全体の信頼を傷つかせかねない事案が相次いでいる。そして、こうした問題の背景には、内閣人事局を使った行き過ぎた官邸主導が悪い忖度(そんたく)を生んでいるとの指摘がある。

内閣人事局の運用見直せ

 自民党は野党時代、「真の政治主導」の実現に向けた提言を取りまとめている(「政治主導」の在り方検証・検討プロジェクトチーム、2010年)。その中で、「政治任用が人事権の『恣意(しい)的な乱用の隠れ蓑(みの)』とならないよう、特に留意する」と記している。つまり、運用を間違えれば、「忖度官僚」がはびこることになると注意を促していた。図らずも、当時の危惧が当たってしまった形だ。

 内閣人事局は、14年、縦割り行政の弊害を打破し、政治主導で戦略的な政策実現を図るため、発足した。各省庁の幹部人事を一元管理している。一部に、内閣人事局が忖度官僚を生んでいるとして廃止論があるが、政治主導の理念は間違っていない。国民に選ばれた政治に対して面従腹背、省あって国なし、と批判された従前の官僚機構に逆戻りすることは許されない。いま必要なことは、内閣人事局の運用を見直し、新しい行政の在り方を政治がしっかり示すことだ。

人事評価の改革を

 行政は、客観的なデータを分析し政策オプションを提示する。同時に、根拠となるデータを幅広く公開し、官民の政策分析競争を促す。専門家としての公務員の役割は、エビデンス(証拠)に基づく政策形成(evidence-based policy making:EBPM)にある。これは、科学的なデータ分析によるエビデンスに基づいて政策立案や政策効果の検証を行うべきだという考え方だ。経済協力開発機構(OECD)が07年にこうした考えを提唱して以降、英米ではそれを確保するための組織をつくっている。

 こうした行政を行う能力のある公務員が正当な評価を受ける仕組みが必要だ。公務員の任用制度と人事評価は、車の両輪として一体的な改革を進めなくてはならない。先進各国においても、政治的な調整機能を発揮する部分と、専門性に基づき客観的な分析や政策の選択肢を提示する部分で分けるなど、政治任用制度と資格任用制度の組み合わせにより、公務員制度を運用している。いずれにしても、明確な基準や透明性のあるプロセスが必須である。

 政治は、行政から提示された選択肢を参考に判断して、その説明責任と結果責任を負う。公文書改ざんや議会に対する虚偽の説明という未曽有の事件を教訓にして、新しい政と官の関係を構築していかなければならない。

 「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」。福田康夫元首相は昨年8月、共同通信のインタビューで警鐘を鳴らした。政治が行政を歪(ゆが)めているという疑念が広がれば、政治が何を語っても、国民には届かなくなってしまう。そのことの深刻さを与党自民党は受け止めなければならない。

菅原琢さんから一言

 内閣人事局の「運用」を見直し、科学的な政策評価をもとに人事評価を行えば、政治主導を強化しても官僚による「忖度」はなくなるはずというのが伊藤達也議員の主張のようです。

 ただし、その具体的な手段はあまり示されていません。

 せっかくなので、官僚の行動を律するより具体的な方策を、読者のみなさんも一緒に考えてみてはいかがでしょうか。コメントお待ちしております。

伊藤達也

元金融担当相

1961年生まれ。93年衆院初当選。通商産業政務次官、首相補佐官、地方創生・国家戦略特区担当相補佐官などを歴任した。衆院東京22区、当選8回。自民党石破派。