自衛隊のリアル

任官辞退した記者が読む「自衛隊失格」

滝野隆浩・社会部専門編集委員
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銃の特殊な扱い方を教える伊藤祐靖さん=東京都江東区で2015年1月18日、武市公孝撮影
銃の特殊な扱い方を教える伊藤祐靖さん=東京都江東区で2015年1月18日、武市公孝撮影

 海上自衛隊の元幹部で、自衛隊初の特殊部隊「特別警備隊」の創設にかかわった伊藤祐靖さん(53)が6月、「自衛隊失格~私が『特殊部隊』を去った理由」(新潮社)を出した。失格とは……。刺激的というか、挑発的な書名である。意味深長でもある。もちろん、本人は本の最後に「私は、自衛隊失格だった」と吐露している。けれどそこには、「自分を置いておけなかった自衛隊という組織はどうなのか」という厳しい問いかけもある。読みようによっては非常に危険な本なのである。防衛大学校卒で、任官辞退の記者として、無謀にも、この本の読み方について考えてみたいと思う。

 それにしても、前作が2016年に出た「国のために死ねるか ~自衛隊『特殊部隊』創設者の思想と行動」 (文春新書)であり、今回は新潮社の単行本である。歴史上の偉人でもないのに、文春、新潮という日本の名門出版社から立て続けに2冊の半生記が出るのは異常である。いや、それだけ伊藤さんの生き方には、たぶんミリタリーという範疇(はんちゅう)を超えた、現代人をひきつける何かがあるということだろう。

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滝野隆浩

社会部専門編集委員

1983年入社。甲府支局、社会部、サンデー毎日編集部、夕刊編集部副部長、前橋支局長などを経て、社会部専門編集委員。現在、コラム「掃苔記」を連載中。人生最終盤の緩和医療・ケア、ホスピスから死後の葬儀、墓問題までを「死周期」として取材している。さらに家族問題のほか、防衛大学校卒の記者として自衛隊をテーマにした著書も多数。著書に「宮崎勤精神鑑定書」「自衛隊指揮官」「沈黙の自衛隊」「自衛隊のリアル」「これからの葬儀の話をしよう」などがある。