レギュラー 佐藤まさひさの「守るべき人がいる」

一帯一路の最前線、アフリカ ― 地経学と地政学の連携

    佐藤正久氏=丸山博撮影
    佐藤正久氏=丸山博撮影

    各国の「中枢」中国が整備

     昨年8月に副外務相に就任してから、これまで30カ国以上に出張しました。アフリカ地域も担当していますが、本稿では佐藤がアフリカで見た中国の「一帯一路」の現場について、皆様にご紹介したいと思います。

     一帯一路は、中国とヨーロッパやアフリカを陸路と海路でつなぎ、巨大な経済圏を作り上げようとする構想で「21世紀のシルクロード」ともいわれており、アフリカもその最前線となっています。

    写真(1)=佐藤正久氏提供
    写真(1)=佐藤正久氏提供

     写真(1)はジブチに中国が建設した新ドラレ港、写真(2)と(3)は新ドラレ港脇の中国軍基地とエチオピアを結ぶ中国が建設した鉄道駅で、そこからエチオピアを結ぶ鉄道も中国が建設しました。

     写真(4)はリベリアで大統領就任式が行われたスタジアムで、これも中国が建設したものです。この他にもアフリカ各地で、議会など国の中枢機能を担う建築物やセキュリティーシステムが中国によって整備されているのです。

    ジブチで大規模軍事訓練

     ジブチは、ヨーロッパとアジアを結ぶ海上交通の要衝に位置し、安全保障上も重要とされています。そのため、現在、アメリカ・フランス・ドイツ・スペインの軍及び自衛隊等がジブチに駐留しています。

     「ソマリア沖の海賊」への対処として、自衛隊は当初、米軍基地を拠点にしていましたが、現在は、ジブチ政府から国際空港に隣接する約15ヘクタールを借りて整備用格納庫、宿舎、駐機場などを整備し、2011年7月に初の海外拠点を開所し哨戒機を派遣するほか、護衛艦はジブチ港を拠点として海賊対処活動を継続しています。

    写真(2)=佐藤正久氏提供
    写真(2)=佐藤正久氏提供

     中国は、昨年夏にジブチに海外ではじめての基地の運用を開始しました。自衛隊の3倍の約36ヘクタールに長城のような壁を築き、その中には短い滑走路や地下施設を擁する重厚なコンクリート製の基地になっています。

     当初、中国国防省は「アフリカや西アジアの平和維持および人道支援活動にあたる」と説明していましたが、今年の5月には、ジブチ国家射撃場で実弾を伴った大規模な訓練も実施しました。更に、紅海の最狭部、バブ・エル・マンデブ海峡を臨む町の開発支援も検討中との情報もあります。まさに地経学と地政学との連携が、このジブチで、目に見える形で実現されています。

    写真(3)=佐藤正久氏提供
    写真(3)=佐藤正久氏提供

    武器輸出や軍事協力も進む

     さらに、中国は資源豊富なアフリカ各国に武器の輸出や軍事協力なども進めています。また、南スーダンなどにPKO部隊を派遣するなど、国連の平和維持活動にも積極的に参加しています。

     中国は鉄道や高速道路などのインフラ建設を進めながら、経済面での進出を行うと同時に、政治や安全保障面でも、アフリカ54カ国と密接な関係を築いて影響力を強めようとしています。アフリカ各国の政府からすると、西欧諸国のように人権や民主主義といったことを大上段に掲げない中国は、付き合いやすいのではないかとの見方もあるようです。

    写真(4)=佐藤正久氏提供
    写真(4)=佐藤正久氏提供

    「99年」貸与も

     スリランカは、中国の融資により10年にコロンボの南東250キロに位置するハンバントタに港を建設しました。しかし、中国側が設定した最高6.3%の金利に返済に窮してしまい、港を99年間中国に貸し出す契約を締結しました。

     「99」という数字には、中国語で久久(ジョウジョウ、永久)と同音で、つまり「永久に手にいれる」との意味合いがあると言われています。99年契約は、この他にも中国企業によるオーストラリア北部ダーウィン港の例があります。

     こうした「債務の罠(わな)」とも呼ばれる事態が、アフリカや中東にも及ばないか心配する声が国際的にも広がっています。すなわち、これらのインフラ投資には、中長期的に何を目的としているのかよく考察すると同時に、かつ開放性、透明性、経済性、財政の経済性など、国際社会共通の価値観を取り入れる必要があります。

     日本は、自由で開かれたインド太平洋戦略のもと、中国と連携できる部分は連携したいと思いますが、前述の国際社会共通の価値観と相いれなければ、連携は困難だと思います。

    日本は独自の貢献が可能

     アフリカに行き、実際に「一帯一路」によるインフラ整備を目の当たりにすると、その規模の大きさに驚く人が多いのではないかと思います。

     ただ、日本はインフラ整備の数や規模というよりも、アフリカ諸国の人々に真に必要とされ、感謝されるきめ細やかな日本らしい独自の援助を行い、更にはアフリカの方々自身による持続的成長可能な分野への重点的な支援もしていく必要があります。

     日本が得意な人材育成や医療・衛生分野、質の高いインフラ整備など、アフリカに貢献できることが多いのではないかと思っています。

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    プロフィール

    佐藤正久

    佐藤正久

    副外相

    1960年生まれ。2007年参院初当選。防衛政務官、参院外交防衛委員長、参院自民党筆頭副幹事長などを歴任。参院全国比例、当選2回。自民党竹下派。自衛隊のイラク派遣で先遣隊長を務め、「ヒゲの隊長」と親しまれている。