政治プレミア 櫻田淳さんのまとめ

「自衛隊は軍隊」その先の議論こそ重要 石破氏の対中・対露方針提示に期待

    櫻田淳さん
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     石破茂衆院議員の「政治プレミア」論稿に即して、筆者は三つの論点を示した。すなわち、それは、「自衛隊は軍隊ではないという説明の有効性」、「自衛隊という名の日本の軍隊が国際安全保障の枠組みで果たすイメージ」、そして「安全保障を国民各層に説くに際しての政治家の姿勢」である。

     読者から寄せられたコメントに触れる限りは、「自衛隊は軍隊ではない」という説明の奇怪さを説いた石破氏の主張は、確かに受けいれられる向きがある。「自衛隊を憲法に位置付けるぐらい、さっさとやってほしい。その先の軍事路線は阻止しよう」という「ムック」氏の反応は、その例であろう。自衛隊を軍隊として明確に位置付けたところで、そのことをもって日本が国際社会にとって「危険な国家」に変貌(へんぼう)することを意味するわけではない、もし、そうした懸念が残るのであれば、「その先の軍事路線は阻止しよう」という反応に表されるような「その先の議論」を通じて晴らさなければならない。安全保障に絡む議論で本来、大事なのは、こうした「その先の議論」が多彩に展開されることである。

     「米国・オーストラリア・ニュージーランドのANZUS同盟と日米同盟を結合させ、そこに東南アジア諸国も加える」という趣旨の石破構想は、そうした「その先の議論」のたたき台の一つとなるものである。ただし、石破構想を「中国を孤立させる意図がある」と受け止め、「中国を孤立させてはアジアの平和は確立できない」と唱えるTakashi Nakanishi氏のような声があるのは、率直な反応であろう。石破構想に示されるような対外認識に「対米追随」と「アジア離間」の匂いを嗅ぎ取る向きは、まだまだ根強いのである。故に、石破構想が意味を持つためには、それに加わるとは多分に想定されない国々との関係をどのように紡ぐかというもう一つの方針が必要になる。それは、すなわち具体的には対中関係や対露関係に絡む方針である。石破氏からは先々、こうした方針が提示されることを期待する。

     振り返れば、一方には、軍隊を専ら「平和への障害」とみる左派的な論調があり、他方には、軍隊の「国家の威信の象徴」としての側面を過度に強調する右派的な論調があった。日本の安全保障に絡む議論は、この二つの論調の狭間(はざま)で窒息してきた感がある。読者のコメントからは、こうした二つの極に分裂した議論は、もはや期待されないものになっている事情が浮かび上がる。安全保障を語る際の「要請の変化」に応じた議論を提示することが、政治家の一つの責任になるであろう。

     たまたま、このたびの議論は、石破氏の論稿を下敷きにしたものであったけれども、安全保障にかかる議論は、今後も倦(う)むことなく続いていくのが大事なのであろうと思われる。

     このたびの議論に加わっていただいた読者各位には、謝意を表する。

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    プロフィール

    櫻田淳

    櫻田淳

    東洋学園大教授

    1965年生まれ。専門は国際政治学、安全保障。衆院議員政策担当秘書の経験もある。著書に「国家の役割とは何か」「『常識』としての保守主義」など。フェイスブックでも時事問題についての寸評を発信。