サマータイム導入の好機だ

遠藤利明・元五輪担当相
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遠藤利明氏=須藤孝撮影
遠藤利明氏=須藤孝撮影

 我が国としては、国連サミットでの決議に基づく持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む必要があり、その一環として低炭素社会を実現することが重要だ。

 五輪との関係でいえば、1964年の東京五輪では新幹線や高速道路が日本の技術の象徴として世界に発信され、レガシー(遺産)となった。

 2020年の東京五輪・パラリンピックでは、レガシーは新幹線のようなハードではなく「ソフト」になる。一つはユニバーサルデザインの社会。そしてもう一つが低炭素社会だ。低炭素社会への取り組みの一つが、サマータイム制度の導入であり、世界に先駆けての(温室効果ガスを発生しない水素を中心とする)「水素社会」の実現だ。

社会を変える契機

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、国際オリンピック委員会(IOC)の了承のもと、SDGsへの貢献を明確にしつつ、持続可能性に配慮した五輪 の運営を行うことにしている。低炭素社会への取り組みはその具体的な例になる。

 新幹線と同じように、五輪開催を通じて日本の新しい社会のイメージを世界に発信してきたい。

 サマータイム導入は単に時間を繰り上げるということではない。2020年をスタートにその後の日本の社会を変えていく契機の一つとして考えてほしい。

 五輪の目的はメダル獲得だけではない。開催をきっかけに、次の日本をどうするのかを考えることが大切だ。

具体的な内容は意見をよく聞いて

 導入するまでにはさまざまな課題があることは十分承知している。幸いなことに日本にはこれまでの議論の積み重ねがある。その蓄積を生かしながら、準備をしていきたい。

 欧米のように4月から半年ほど実施するのか、あるいは、7~9月のようにもっと短期間にするのか。また繰り上げる時間を1時間にするのか、2時間にするのか。

 こういったことについては、決めつけることをせず、みなさんの意見をよく聞いて考えていきたい。

 いつから導入するかについては、システムの対応に要する時間もあるし、国民に周知する期間も1年は必要だ。19年に試行、20年に本格導入というようなスケジュールありきでは考えていない。

 ただし、五輪のレガシーにするという意味では、試行でもよいので、五輪開催時には導入したい。

 金融決済のシステムなどの課題は多い。ただし、主要7カ国(G7)のうち、サマータイムを導入していないのは日本だけだ。先行事例があるわけだからそれに学べばよいのであって、日本だけができないということにはならない。

 朝早く涼しいうちに通勤、通学し、早めに仕事を終えて余暇を有効利用する。働き方改革の趣旨にも一致する。いいタイミングだと思っている。

 もちろん、五輪の暑さ対策にもなる。暑さ対策は五輪担当相だった時から一番心配なことの一つだった。今夏の猛暑を受けてその懸念は深まっている。

世界と日本の状況は変わっている。

 日本ではサマータイム導入はこれまで何度も挫折している。しかし、現在はこれまでとはエネルギーにたいする考え方が根本的に変わってきている。東京電力福島第1原発の事故があり、「原発があればいい」というわけにはいかなくなった。

 再生エネルギーを増やし、かつエネルギーのコストを下げなければならない。さらに二酸化炭素排出量を減らさなければならない。SDGsにも取り組まなければならない。

 ならば、やはり五輪を機会にサマータイムを導入すべきだ。この機会を逃せば実現は難しくなる、と思っている。

遠藤利明

元五輪担当相

1950年生まれ。山形県会議員を経て93年衆院初当選。建設政務次官、副文科相などを歴任。衆院山形1区、当選8回。自民党。