レギュラー 細野豪志の「ダイバーシティジャパン」

外国人労働者を「人」として受け入れる覚悟を

    細野豪志氏=太田康男撮影
    細野豪志氏=太田康男撮影

     この夏、約20年ぶりにベトナム・ハノイを訪問した。日本への技能実習生(※1)の最大の送り出し国となっているベトナムの実情視察が目的だ。三つの送り出し機関や技能実習予定者が学ぶ医療介護の短大などで、関係者の話を聞いた。

     飛行機に乗るのも初めてというような若者が、夢を抱き、親戚一同の見送りを受けて日本に向かう。彼らが日本に来て失望しないようにしなくてはならないと思った。

    受け入れ拡大する入管法改正案

     政府は、「特定技能」(仮称)という在留資格を新設する入国管理法改正案を今秋の臨時国会で成立させ、来年4月から施行することを目指している。外国人労働者の受け入れを大幅に拡大することになる。

     現在の外国人技能実習制度が限界に来ていることが改正の背景にある。日本はこれまで、技能移転や留学を建前とした技能実習生や語学留学生で事実上、労働力不足を埋めてきた。しかし、労働力不足がいよいよ深刻になり、建前と現実の乖離(かいり)が埋められなくなっている。

     このため、特定技能の対象になる職種は広くなりそうだ。建設、造船、農業、介護、宿泊の5業種といわれていたが、金属加工、鋳造、食品加工などの製造業、漁業なども対象になる可能性がある。単純労働に近いものも対象になってくる。

     これは、単に在留資格の種類が増えるという性格のものではない。政策の質的な転換だ。私は外国人労働者の受け入れには賛成の立場だが、受け入れるにあたっては社会の側にもそれに応じた覚悟が必要になると考えている。

     臨時国会で議論するならば、社会のあり方そのものにかかわる、国柄そのものに関わる重大な問題だという認識で議論を始めるべきだと思っている。

    労働力不足を補う「便利なモノ」ではない

     日本にやってきた外国人労働者一人ひとりの人生を考えたら、政策がふらふらと変わるようなことがあってはならない。事前に十分、準備しておく必要がある。

     大切なのは、外国人労働者を労働力不足を補う「便利なモノ」とみなさず、「人」として扱うことだ。私はあえて「移民」という言葉を使いたい。

     そう考えれば、今回の入管法改正は技能実習制度の問題をそのまま引き継ぐようなものであってはならない。

     技能実習生が日本に来る際に多額の借金を背負わされる例がある。また、仕事で中核的な役割を担わせず、5年間の期間中、同じ作業だけさせる。特定技能では、こうしたことは変えていかなければならない。

     また、技能実習生には家族の帯同が許されていない。これはやむを得ないかもしれない。しかし、特定技能の場合、5年の技能実習を終えたあと、さらに5年、特定技能の資格で在留を認めるというコースも想定されている。もし特定技能でも家族の帯同を認めないとすると、その人は20歳で来日したとして30歳まで独りということになる。そういう制度で、日本社会に来て良かったと思うだろうか。

     労働力不足を埋めるために技能実習制度を拡大するというように単純に考えては、同じ過ちを繰り返すことになる。

    日本社会も備えを

     外国人労働者の受け入れが進むと、「外国人が日本人から職を奪った」というような、社会の分断が起きる可能性がある。欧州のように、これをきっかけに排外主義が広がる危険には十分注意する必要がある。

     業種ごとに有効求人倍率などの基準を設けて線を引く「労働市場テスト」を課すべきだ。客観的な基準を設けることで疑心暗鬼を防げるし、日本人の雇用を奪うこともなくなる。

     現在すでに起きているのが、医療保険の扶養範囲の問題だ。健康保険法では「被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの」は被扶養者として認定される。

     外国人労働者が海外の親などに仕送りをしていた場合、その親も保険の対象になりうる。日本に住んでいる場合は家族が保険の対象になるのは当然だと思うが、こうしたことには一定の線引きが必要になる。

     外国人労働者の受け入れ自体は、現実には選択の余地がないところまで来ている。ならば、プラスの面を生かしつつ、社会構造を少しずつ変えていけばよい。日系人が多い群馬県太田市や浜松市など地方自治体によってはすでにさまざまな問題を乗り越えてきたところがあり、その経験に学ぶことができる。例えば、小学校でクラスに外国人がいることが当たり前になれば、子どもの時から多様性を理解する教育になる。

     日本には外国からいろいろなものを取り入れて日本流にアレンジしてきた歴史もある。今回もきちんと受けとめれば良いのであって、悲観する必要はないと思っている。

    (注1)外国人技能実習制度は、開発途上国への技術移転を建前とする制度で、海外の送り出し機関が現地で募集し、日本の受け入れ機関が実習先の会社にあっせんする。最長5年で、居住場所の選択や転職の自由はない。劣悪な労働を強いるケースが後を絶たず、受け入れ団体や実習先への監督を強化する適正化法が2017年に施行された。

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    プロフィール

    細野豪志

    細野豪志

    元環境相

    1971年生まれ。2000年衆院初当選。首相補佐官、原発事故担当相、民主党幹事長などを歴任。衆院静岡5区、当選7回。民主党政権では原発事故対応に奔走した。00年に旧静岡7区で初当選した際は地縁がない、いわゆる落下傘候補だった。「パラシューター」という著書がある。