陸上イージスは「最優先」か ご意見募集

櫻田淳・東洋学園大教授
  • 文字
  • 印刷
櫻田淳さん
櫻田淳さん

 佐藤正久副外相の「政治プレミア」論稿は、「イージス・アショア」と称されるミサイル防衛計画の意義とその推進を説く中身となっている。この論稿には、既に十数件のコメントが付されているので、更なる議論の材料として次のことを記しておくことにする。

 「そもそも、『イージス・アショア』計画は、第二次世界大戦直前に巨額の国費を投じて建造されながらも実際の戦闘では大して役に立たなかった二つの『大和』級戦艦と同じ類いのものになることはないのか」。「イージス・アショア」計画に絡む懸念は、このことに尽きるのであろう。

 「イージス・アショア」に係る「費用」に関していえば、その「巨額」イメージが先行して語られる。配備後の維持・運用費用を含めれば5000億円に達する国富を投じることになるという観測を前にする時、そうしたイメージを払拭(ふっしょく)するのは難しいであろう。ただし、これとは別に考えなければならないのは、「イージス・アショア」は、陸海空3自衛隊が他に使うべき費用にしわ寄せを来しても、優先的に構築されるべき枠組みなのか。「イージス・アショア」それ自体の費用も然(さ)ることながら、他の安全保障費用とのバランスもまた、この際、議論されるにふさわしいであろう。

 「効果」に関していえば、「イージス・アショア」は、一義としては北朝鮮のミサイルに備えるためのものと説明される。現下の朝鮮半島における緊張緩和の動きが何時、一転するかは予断を許さない以上、それに適宜、備えておくべきであるという佐藤氏の主張は、それ自体としては首肯できる。しかし、北朝鮮の脅威に対抗する選択肢として、「イージス・アショア」が持つ「効果」は、他の選択肢に比べて、どの程度まで期待できるのか。そうしたことは、一般国民にはわかり難いものである故に、一層、丁寧な説明が必要とされよう。

 逆にいえば、日本のミサイル防衛網が備える対象が北朝鮮だけではなく他の国々にも広がった場合には、「イージス・アショア」の態勢は果たして十分なものとなり得るのか、十分でないとすれば、秋田や山口の他に、どの程度まで「イージス・アショア」部隊の拡充が必要になるのか。こうしたこともまた、議論の題材になるはずである。

 「イージス・アショア」は、日本の人々にとっては、たとえ当座の安全を担保するために必要であったとしても、全幅の安全を提供できる「完璧な盾」ではないのかもしれない。そうであるならば、「イージス・アショア」に関しては、日本の安全保障政策の全体像の中で、「どのような脅威に対して,どの程度まで対応するのを期待するか」が、問われることになる。「イージス・アショア」に絡む議論は、技術論としての色彩が往々にして濃くなる故に、「木を見て森を見ない」議論に陥るのは、避けるべきことに違いない。■

櫻田淳

東洋学園大教授

1965年生まれ。専門は国際政治学、安全保障。衆院議員政策担当秘書の経験もある。著書に「国家の役割とは何か」「『常識』としての保守主義」など。フェイスブックでも時事問題についての寸評を発信。