レギュラー 「至誠通天」長妻昭

「安倍1強」選挙制度で一変 ドイツなら?

    長妻昭氏=和田大典撮影
    長妻昭氏=和田大典撮影

     早いもので総選挙から1年を迎える。昨年10月の総選挙を振り返ると、意外に思われるかもしれないが、比例代表の得票率は与党より野党の方が多かった。

     与党(自民党と公明党とする)45.79%、野党(自由党は候補者を擁立しなかったため、立憲民主党、希望の党、共産党、社会民主党とする)46.83%と若干野党が上回っている。決して投票行動において自民党は圧倒的支持を得たわけではないが、議席数は1強多弱といわれるように自民党が圧倒している。

    昨年衆院選 ドイツの制度なら与野党が拮抗

    選挙の結果は、言うまでもなく選挙制度によって大きく左右される。今回は、堅苦しい論説でなく、少し、頭の体操をしてみたい。昨年10月の衆議院選挙が、例えば、ドイツの選挙制度であればどんな結果になったのだろう。

     ドイツの下院選挙では、議席配分はほぼ完全比例となる。政党に投票した票数に比例して各政党に議席が配分される。仕組みはこうだ。

     投票方法は、日本と同様で小選挙区の候補者と政党(各州の名簿搭載政党)に1票ずつ投じる。まず、小選挙区でトップになった候補者は無条件で当選となる。

     小選挙区での当選者を含めて各政党に政党得票率に基づき議席が比例配分されるため、総議席数は選挙の度に変動する。議席総数を固定してしまうと、第1党が政党得票率以上に小選挙区で議席を獲得した場合、各党に比例配分できなくなるからだ。

     私たちにとって選挙の度に総議席数が変動することは奇異に映るが、ドイツでは例えば2017年の選挙では下院議員総数は709人、その前13年の下院選挙では総数631人と毎回変わる。

     また、ドイツでは、全国で得票率5%以上、または小選挙区3議席以上を獲得した政党でなければ議席の比例配分はない、というルールがある。

     昨年の日本の総選挙で、追加公認を除くと、与党は223人が小選挙区で当選(自民党215議席、公明党8議席)したことを踏まえて計算してみた。

     すると、与党は296議席(自民党215、公明党81)である一方、野党は293議席(立憲129、希望112、共産51、社民1)と拮抗(きっこう)する結果となった。

     社民党は前述した比例配分政党の要件を満たさなかったため比例議席配分はなされず小選挙区当選者のみの1議席とした。このため野党の得票率の方が高いのに与党の議席が上回ることとなった。

     この他に小選挙区で無所属当選者が26議席あり、そのほとんどが野党系であることをみれば、事実上、野党が与党を上回る。ちなみに議員総数は654議席となり現行衆議院議員定数465から大幅に増える。

    フランスなら逆転相次ぐ

     もう一つ、みてみよう。もし、日本がフランスの制度だったらどうなるだろう。

     フランスの下院の選挙制度は単純小選挙区制である。まず、投票結果で過半数を得票した候補者は無条件で当選となるが、該当者がいない場合は、上位2人で決選投票となる。1週間後に決選投票がなされ、多数を得票した候補者が当選となる。日本では野党が乱立して与党を利する、ということがあった。仮にこの制度であれば、決選投票で与野党一騎打ちの構造になる可能性が高い。

     仮に昨年10月の総選挙で与野党一騎打ちの対決となればどうなっていたのか。各種マスコミの試算によると、各野党候補の得票を単純合計すると60以上の小選挙区で野党が与党に逆転勝利する。もちろん、野党候補を一本化したら他の野党票をすべて取り込むことができるとは限らないが、一つの示唆に富む試算である。

    自民に圧倒的な支持とはいえない

     以上、頭の体操をしてきたが、もちろんここは日本であり、負け惜しみを言おうとするのではない。国民の投票行動をみると、決して自民党が圧倒的な支持を得ているわけではないということだ。野党は悲観しても楽観してもならない。

     来年7月の参院選、そしていずれ来る衆院選は恐らく安倍晋三首相と戦うこととなる。

     私たち立憲民主党は、国民のみなさんとつながり、日常の暮らしや働く現場の声を立脚点としたボトムアップの政治を目指している。「多様性を認め合い、一人ひとりの持ち味が発揮される社会」「困ったときに寄り添い、お互い様に支え合う社会」という目指す社会像をわかりやすく掲げていく。

     その上で、それぞれの選挙で勝ち上がるための充実した活動をし、できる限り与野党一騎打ちの構造に持ち込む、この不断の努力を続けていけば道は必ず開ける。

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    プロフィール

    長妻昭

    長妻昭

    立憲民主党政調会長

    1960年生まれ。日経ビジネス誌の記者などを経て、2000年衆院初当選。厚生労働相、衆院厚生労働委員長などを歴任。衆院東京7区、当選7回。「消えた年金」問題を追及したことで知られる社会保障問題のエキスパート。