政治プレミア 長妻さんの寄稿に一言

野党が候補を一本化する意義は? 「仲たがい」どうすればいい?

    菅原琢さん
    菅原琢さん

     選挙での得票率を合算すれば与野党拮抗(きっこう)しているが、野党がバラバラに戦っているために自公の独走を許している。したがって野党は候補を一本化して戦わなければならない。――長妻昭議員の議論を要約すればこのようになるでしょう。

     長妻議員の試算が示すように、現在の日本の選挙制度では投票結果と議席比が大きく乖離(かいり)しています。その原因が、有権者や与党ではなく、バラバラに戦っている野党にあることも確かです。

     こうした野党の現状に対し、みなさんはどう思い、考えているでしょうか? 候補一本化の是非にとどまらず、野党各党への期待や不安、制度の問題点、戦略の提言等々何でも構いませんので、野党の今後に資するご意見、ご感想をコメントとしていただければと思います。

     以下、参考までにモデレーターの考えを記しておきます。

    仲たがいする野党という深刻な問題

     冒頭の要約のような考え方自体は、これまでモデレーターも各所で述べてきましたので異論はありません。しかし次のような理由から、野党協力が実現すればそれでOKとも考えていません。

     少し「頭の体操」を続けてみましょう。仮に多数の野党による選挙協力が実現して自民党と公明党に代わり与党となったとします。このとき、現在の野党が安定して政権運営できると自信を持って言える人はあまりいないのではないでしょうか? おそらく野党各党の幹部の皆さんもそうでしょう。

     現在の日本の野党は互いにけん制したり嫌悪したりが目立ち、うまく協調し与党に対抗することができません。各党の政策や思想信条が異なる以前に、政治家同士の対立感情が強いことがこの要因となっています。

     立憲民主党、国民民主党、自由党の多くの国会議員はもともと民主党に所属していましたが、政策や路線の違いから分かれて現在に至ります。日本維新の会や現希望の党にも元民主党国会議員が所属している一方、民進党や旧希望の党の結成と解党を通じ民主党系の議員とはあつれきがあります。民主党政権時に社民党は連立に加わっていましたが、普天間飛行場移設問題をめぐり連立から離脱しました。そして民進党が空中分解した根本には、共産党との距離をめぐる路線対立がありました。

     いつものように仲たがいが始まり、政権を継続できずに自公連立政権に戻るのなら、野党が候補を一本化して戦う意義はどこにあるのでしょうか? これはモデレーターだけでなく、おそらく多くの人が感じる疑問だと思います。

    選挙制度の重要性

     異なる選挙制度を導入した場合にどうなるかという長妻議員が行った「頭の体操」は、この疑問への部分的な解を示しています。

     自公に対抗するために野党が事前に候補を一本化する必要があるのは、両院ともに小選挙区(1人区)に選挙結果が左右される制度のためです。これに対し、ドイツのような比例代表制を中心に置く制度やフランスのような2回投票制では、まず有権者に判断が委ねられ、その結果を受けて各党が“事後に”連立交渉や選挙協力の話し合いを行う側面が強くなります。

     このとき、有権者の投票結果を踏まえることで、各党間の政策的対立もある程度の落としどころを探ることができます。事後でも争いは当然起きますが、誰が候補になるのかを争わないで済むので、不毛な仲たがいは抑えられて政策的な交渉に集中できるのではないでしょうか? 政党間の協力関係の成否いかんで各党の議席比が投票結果に比べて大きくゆがんでしまう現状よりは、よほど健全でしょう。

     このように考え、もっと有権者に政治の方向性を委ねるような選挙制度を導入することこそ野党が政権を目指す第一の意義となるのではないか。モデレーターはそのように考えています。

    皆さんはどう感じますか?コメントをお寄せください

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    プロフィール

    菅原琢

    菅原琢

    政治学者

    1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、共著「平成史:増補新版」など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」http://kokkai.sugawarataku.net/を運営。