部隊派遣は曲がり角 日本の役目は下支え

森本敏・元防衛相
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森本敏氏=須藤孝撮影
森本敏氏=須藤孝撮影

 日本の国連平和維持活動(PKO)は、国連安全保障理事会の決議に基づくPKOに協力するという原則で行われてきた。

 ところが、いかに事態が深刻であっても安保理決議が通らないような紛争が急速に増えている。

 特にアジアでは問題が起きても安保理決議が通る見通しは立たない。ミャンマーのロヒンギャ難民の問題でも南シナ海の問題でも安保理決議が通るような状況ではない。

 今後、PKOの部隊が出ていくような紛争の可能性は中東とアフリカ以外は考えにくい。そして先進国はほとんど部隊を出さなくなってきている。

求められるのは能力向上支援

 9月25日に国連本部でPKO改革(PKOのための行動)のハイレベル会合があり、河野太郎外相も出席した。宣言には「PKOを行う基盤的な能力の向上への協力」などが書かれているが、PKOに各国が部隊を出すというより、むしろ、国際平和協力活動にどのような協力を進めるかということが焦点だ。

 会合での河野氏の発言でも、要点は「PKOミッションを支える支援要員・部隊の能力強化」と「ジェンダー分野での支援強化」だった。

 日本のような先進国に求められているのは部隊を出すというよりもPKO全体の能力と体制を支えることだという認識が背景にある。

 自衛隊も南スーダンから撤収した後、いろいろと情報交換や派遣先の検討をしている。しかし、条件が整って国民に理解されるような行き先はなかなかみつからない。

 日本が初めてカンボジアでPKOに参加して以来の約四半世紀、さまざまな活動を通じて経験を積み、国際的に高い評価をうけてきた。

 しかし、日本のPKO活動は出て行くこと自体に意味があった第1期を終え、PKO全体の下支えをする第2期に入ってきたと考えている。

 下支えというのは、PKOに部隊を出す途上国に対する能力向上支援だ。例えばアフリカで編成されるPKOの部隊に、重機や通信機を供与し、使用方法を訓練する。

 日本だけではなく専門家が各国から集まり、チームを組んで能力向上のための訓練をする。資金が必要で、優秀な人材も出さなくてはならないが、危険性はあまりなく、人数もそれほどいらない。

 日本にはPKOの経験が豊富にあるが、そうしたPKO活動の経験者はやがて少なくなっていく。今の間にPKO部隊の指揮管理やロジスティクス(後方支援)の手法などで国際的に高い評価を得てきたノウハウを他国に伝えることも重要だ。これは、部隊派遣に比べると地道ではあるが、この分野こそ日本が国際社会から求められている支援だ。

PKO自体の限界も

 一方、国連ではPKOの枠組み自体に限界が来ているという認識も広がっている。国連PKO局の再編も議論されていると聞く。安保理決議がない場合でもどのように紛争解決に役割を果たせるか、という課題に焦点が移りつつある。日本もそれをふまえて今後を考えなければならない。

 平和安全法制では「非国連統括型」の活動にも幅を広げた。

 エジプト・シナイ半島に駐留する多国籍軍・監視団(MFO)はキャンプ・デービッド合意に基づいて米国が主導した経緯があり、他の常任理事国による反対があったこともあり、今後も、安保理決議は通らないだろう。しかし日本は中東を安定させるために重要な活動だという認識で、以前から資金協力をしてきている。

 ただこうした日本の参加が可能な枠組みが今後も頻繁にあるかというと、そうとも言えない。

 例えばシリアではPKOは難しいとして、ではイラクでやったような人道支援活動を日本ができるか。アサド政権を支援するような形になってしまう可能性がある支援活動は難しい。日本ができる国際平和協力を考えるうえでは、とても難しい時代になっている。

森本敏

元防衛相

1941年生まれ。自衛官を経て、外務省安全保障政策室長、野村総研主席研究員、防衛相補佐官などを歴任。拓殖大学総長。