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見えない潜水艦訓練「公表」で見えてきたもの

滝野隆浩・社会部専門編集委員
南シナ海で潜水艦の探知訓練をする海上自衛隊の護衛艦「かが」(奥)と搭載ヘリコプター=2018年9月13日(海自提供)
南シナ海で潜水艦の探知訓練をする海上自衛隊の護衛艦「かが」(奥)と搭載ヘリコプター=2018年9月13日(海自提供)

 そのニュースを最初にテレビで見かけたとき、思わず「へー」と漏らしてしまった。へーっ、そこまでやるようになったんだな、と。9月17日、海上自衛隊が南シナ海での潜水艦の訓練について公表した案件である。艦の構造自体が「機密」とされ、乗艦取材の際もハッチの厚さから性能がわかってしまうなどとして写真撮影が厳しく制限される。そんな潜水艦の行動について、訓練とはいえ「公表」することはふつうならありえないと感じた。だから、この公表のウラには何か大きな意図があるはずだ、と。

 翌日になって、この案件はその日の朝刊1面で朝日新聞が報じた「特ダネ」だと知った。だとしたら、「へー」というより「ほぉー」である。本当は知らせたくない事実を新聞に書かれたなら、自衛隊という組織は「公表」はしない。私は防衛記者の経験があるから体感的に分かる。他社の記者たちから事実確認を迫られ、広報担当者が上層部の了解を取ったのち、しぶしぶ認めるものだ。そういうのは、「公表」にはならない。つまり、朝日…

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社会部専門編集委員

1983年入社。甲府支局、社会部、サンデー毎日編集部、夕刊編集部副部長、前橋支局長などを経て、社会部専門編集委員。現在、コラム「掃苔記」を連載中。人生最終盤の緩和医療・ケア、ホスピスから死後の葬儀、墓問題までを「死周期」として取材している。さらに家族問題のほか、防衛大学校卒の記者として自衛隊をテーマにした著書も多数。著書に「宮崎勤精神鑑定書」「自衛隊指揮官」「沈黙の自衛隊」「自衛隊のリアル」「これからの葬儀の話をしよう」などがある。