
トランプ政権は中国との貿易赤字が巨額であるとして、中国からの輸入物品に関税をかけはじめ、現在では取扱量の半数がその対象となった。中国もこれに反発して同様の報復関税をかけ、さながら「貿易戦争」の様相を呈している。
現在のアメリカ経済は拡大基調にあるが、この影響は今後じわじわと実体経済に影響を及ぼしてくるに違いない。また日本をはじめ世界の企業は、「世界の工場」と言われてきた中国国内での製造拠点のメリット減少を見越して、他の国へのシフトを考えはじめている。世界経済の見通しがどんどん暗くなってきている。
自由貿易、自由市場の存在は比較劣位の産業の撤退と比較優位の産業への転換を後押しして、世界経済を拡大してきた。劣位の産業には厳しい試練を与えてしまうが、優位な産業に人材と資源を首尾よくシフトできれば、世界経済は成長する。第二次世界大戦の終盤にスタートしたブレトンウッズ体制、関税貿易一般協定(GATT)とその後継の世界貿易機関(WTO)は、まさにこれを実現することが目的であった。
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船田元
元経済企画庁長官
1953年生まれ。79年衆院初当選。自民党青年局長、経済企画庁長官、党憲法調査会長などを務めた。92年に経済企画庁長官として入閣した際は39歳で、当時戦後最年少だった。衆院栃木1区、当選12回。憲法問題では与野党を超えて信頼される。
連載:「はじめの一歩」船田元
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