前原誠司の直球曲球

米中対立の今こそ、日本の好機になりうる

前原誠司・元外相
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前原誠司氏=太田康男撮影
前原誠司氏=太田康男撮影

 世界第1位と第2位の経済大国が争っている。他の国も巻き込み、世界全体の経済に悪影響が及ぶことは避けられない状況だ。

米国は「中国製造2025」を警戒

 米中貿易戦争の根本には、中国が米国の覇権を脅かしはじめたことがある。

 習近平国家主席が掲げる「中国の夢」とは結局は米国に追いつき、追い越せという中華民族の偉大な復興を目指すものだ。覇権主義的な側面は否定できない。

 その核となるのがハイテク産業を育成する国家戦略「中国製造2025」だ。人工知能(AI)やドローン、キャッシュレス決済、自動運転、ビッグ・データなどの分野で主導権を握ろうとしている。

 米国は中国が不公正な競争を行い、技術移転を強制し、あるいは知的財産を侵害して技術を盗んでいると非難している。こうした分野では経済と軍事は別々に考えることはできない。中国に先手をとられれば、米国は軍事面でも主導権を奪われる危険がある。米国はそのことを強く警戒している。

 

 「中国製造2025」の目指すところを今からたたいておくというのが、米国の狙いだ。

 中国も「中国製造2025」を撤回する、というわけにはいかない。米国を納得させるには、知的財産権などの問題を改善するということをきちんと示さなければならない。

 また、米軍などでは情報流出の恐れがあるため、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)製の機器の使用を禁止している。オーストラリアなど他の国でも同様の動きが広がっている。こうした懸念についても中国は明確にしなければならない。

米中双方と話が出来る日本

 知的財産権の保護などは法治国家においては基本的なルールの一つだ。日本としては中国を名指しで批判するというより、同じ価値観を共有する他国と協力して国際的な市場ルールが守られる状況を作っていくことになる。

 もっとも、トランプ米大統領は多国間の取り組みよりは、直接的な米国の国益、いわゆる「アメリカ・ファースト」を追求している。

 こうしたやり方には功罪がある。中国の覇権主義をおさえる上では、一定の効果がある。中国も今までの米国のリーダーとはやり方が違い、目先でごまかすことはできないと思っている。

 一方で世界最大の軍事大国である米国が、国際的な枠組みから外れて、2国間交渉で力押しで言い分を通そうとするのは功罪の罪の部分だ。同盟国である日本としては非常に難しい外交技術が求められる。

 ただ、このところ日中関係が改善している背景には、米国の中国に対する厳しい態度があるのも明らかだ。

 考え方によっては日本は、米中が争っているなかで両方を股にかけて外交が出来る絶好の立場にいるともいえる。

 法の支配、自由貿易を重んじる立場を堅持しつつ、複合的な外交を展開する。中国も加盟しているアジア太平洋経済協力会議(APEC)の枠組みや東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を利用しながら、多国間のルール作りを日本が主導して構築していくチャンスだと考えるべきだ。

 中国の発展は基本的に日本にとっても利益になる。「中国の夢」の覇権主義的な側面についてはきちんと指摘しつつ、米中両国と話をしながら双方にとって利益になる方向にまとめていくことを目指すべきだ。

前原誠司

元外相

1962年生まれ。京都府議を経て、93年衆院初当選。外相のほか、国土交通相、国家戦略担当相などを歴任。民進党代表として希望の党との合流を主導した。衆院京都2区、当選9回。国民民主党。京大法学部で高坂正堯教授(故人)のゼミに所属し、外交安保を得意分野とする。