時の足音

旅する人という天皇像

伊藤智永・編集委員兼論説委員
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訪問先にピンを打った世界地図を見ながら談笑される天皇、皇后両陛下=皇居・御所で2018年12月10日、宮内庁提供
訪問先にピンを打った世界地図を見ながら談笑される天皇、皇后両陛下=皇居・御所で2018年12月10日、宮内庁提供

 天皇陛下最後の記者会見は、在位30年間を「旅」と言い表した。即位してからの自分はずっと「旅する人」だったというのである。旅の目的は「憲法で位置付けられた象徴天皇の望ましい在り方を求める」ことにあった。終着地があるのか分からない、いつ終わるともしれない「こころの旅」。ならばこれは比喩ではなく、在位中の心境を言葉にした率直な表現だろう。

 天皇がさすらう旅人だった、という告白に、静かな衝撃を受ける。天皇とは伝統的に、都の中心で静かに鎮座…

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伊藤智永

編集委員兼論説委員

記者歴30余年。平成の日本政・官界を担当してきた。ジュネーブ特派員として2010年、アラブ民主革命やギリシャ経済危機の現場を歩く。毎日新聞にコラム「時の在りか」連載中。著書に「靖国と千鳥ケ淵」(講談社+α文庫)「忘却された支配」(岩波書店)他。