
馳浩・元文部科学相が日本語教育を国策として推進すべしと説いている。これまでも日本語教育の重要性は指摘されてきたが、実態は必ずしも満足すべきものではなかった。特に、昨今入国管理法が改正され、既に国内にいる外国人労働者130万人が今後5年間で160万人を超えることが確実な今、馳氏の問題意識は極めて重要である。
日本語教育は「日本に働きに来た人が安心して生活し続けるために必要」であり、多文化共生社会のためにも重要だと馳氏は主張する。しかし、日本の「社会を分断しないため」には外国人に対する日本語教育の充実だけでは不十分であり、日本社会が彼らを受け入れるなど、真の意味で「多文化共生社会」となる条件が満たされる必要もあるだろう。
例えば、フランスは異なる宗教や文化を持つ外国人移民に対し、フランス語をしゃべりフランス式世俗主義を尊重するフランス人となることを求める。逆に、イギリスでは外国移民の宗教や文化は尊重するが、彼らを英国人として受け入れるのには慎重だ。いずれの場合も社会は分断されてしまった。問題はフランス語、英語の教育だけでは解決しないのだ。
では日本はどうするのか。今回の入管法改正は「移民政策」の導入を意味しないが、外国人に日本語を教え、ある程度日本語がしゃべれるようになれば、彼らは日本での定住を望むようになるだろう。その時、日本は彼らに永住権を与えるのか。与えないのであれば、何のための日本語教育なのか、との不満が外国人から出るかもしれない。
果たして、日本国内での外国人に対する日本語教育はいかに進めるべきか、読者の皆さんの見方はいかがでしょうか。
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。
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