寄稿

鯨肉は日本の食文化 IWC脱退で孤立などしない

    江島潔氏=須藤孝撮影
    江島潔氏=須藤孝撮影

     「IWC」というのは国際捕鯨委員会だ。資源管理をしながら捕鯨を進める組織のはずだ。国際捕鯨取締条約にも「捕鯨産業の秩序ある発展」と明記されており、捕鯨が大前提だ。

     反捕鯨国は、以前は「本当にクジラの資源が回復しているか確認すべきだ」などと主張していた。しかし、日本がクジラの資源が回復しているという科学的データを示すと、クジラを殺すこと自体に反対するようになった。これでは議論は成り立たない。

     鯨類の数が問題ではないというなら、モラトリアム(商業捕鯨の一時停止)もいつまでも解除されないことになる。

     「クジラを殺すな」という反捕鯨国の主張はIWCの趣旨に反している。IWCをクジラを守る団体にしたいなら、加盟国の4分の3以上の賛成を得て活動の目的を変えなくてはならない。しかし反捕鯨国は過半数こそ占めているものの、そこまでの数はない。

     IWCは機能不全になっている。日本は2018年に改革案を提出したが、否決された。このため脱退を決めた。

    お互いの文化尊重を

     IWC脱退で国際社会で日本が孤立するというような論調はおかしい。IWCの構成をみても捕鯨国側が日本を含めて41カ国、反捕鯨国は48カ国だ。反捕鯨国のほうが多いとはいえ、けして日本が孤立しているわけではない。

     米国をはじめとして反捕鯨国には欧米諸国が多いために懸念があるのかもしれない。しかし「クジラを殺すべきではない」と主張するのは鯨食の習慣がない国だ。一方で日本は太古の昔から沿岸捕鯨をしてきて、長年、地域の産業となってきたところもある。

     食文化は地域で異なるのが当然だ。いろいろな価値観がある世界で、みなが平和に暮らしていくためには、お互いの文化を尊重しなければいけない。クジラは特別だという価値観を他国に押しつけるならば、豚を汚れたものとする宗教や牛を神聖視する宗教の国がその価値観を他国に押しつけることも認めるのか。オーストラリアはカンガルーの肉を食べるが、だからと言って日本が「可愛いカンガルーを食べるのはやめろ」などと言うはずがない。

     食文化は宗教と同じで、それぞれの地域が守ってきたアイデンティティーそのものだ。反捕鯨国は米国といい、オーストラリアといい、ニュージーランドといい、みな畜産輸出国だ。他国の独自の食文化を壊すことで、牛肉や豚肉の輸出を増やそうとしているのではないかとも思っている。

    鯨肉の消費拡大を目指す

     IWCの脱退で日本の商業捕鯨が再開される。とはいっても、捕鯨量が年間20万トンを超えていた昭和30年代のような産業にもう一度しようと考えているわけではない。

     日本が調査捕鯨で捕獲しているのは多い時でも年間3000トンだ。ほぼ同量の輸入があるので、現在の需要は年間5000~6000トン程度だ。牛や豚に比べれば少ないが、馬肉の消費量は年間約1万2000トンだ。身の丈にあったやり方でやれば鯨肉も十分、産業として成り立つ。

     そもそもこれまでの調査捕鯨は数も限られていて「産業」ではない。調査の副産物である鯨肉を活用していたにすぎない。

     調査捕鯨は調査が目的なので体長などの測定が優先される。血抜きなどの食肉のための作業は後回しになる。どうしても肉質は落ちる。だから、商業捕鯨になれば鯨肉はおいしくなる。これは消費者にはしっかりアピールしたい。

     また、調査捕鯨が中止されると、南極海では捕鯨ができなくなる。これは残念なことではあるが、南極海は漁場が遠いことや船の設備の関係でコストがかかる。北半球だけで捕鯨をやるということになれば鯨肉の価格も下がると思う。

     肉のおいしさや価格をPRしながら、少しずつ消費を増やしていきたい。

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    プロフィール

    江島潔

    江島潔

    元国土交通政務官

    1957年生まれ。下関市長を経て、2013年参院初当選。国土交通政務官、自民党水産部会長などを歴任。参院山口、当選2回。自民党細田派。