政治プレミア 玉木雄一郎さんの寄稿に一言

女性は「政治力が低い」のか 国会の中高年男性支配どう考える ご意見募集

    菅原琢さん
    菅原琢さん

     日本の国会の女性議員比率が、世界的に見て極端に低いことは周知の事実だと思います。列国議会同盟による193カ国の国会(2院制の場合は下院)の女性議員比率をみると、最新の2019年1月で、日本(10.2%)は165位と下位に沈んでいます。日本より下位には、イスラム諸国や太平洋の小国、君主制や軍事政権の国々、内戦中もしくは内戦終結直後の国々が並びます。以前より政界では女性議員の増加の必要性が叫ばれていました。しかし、これが掛け声に過ぎなかったことは、この数字が証明していると言えるでしょう。

     昨年成立した政治分野における男女共同参画推進法(概要http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/pdf/law_seijibunya01.pdf、全文http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/pdf/law_seijibunya02.pdf)は、このような現状を受け、政界に変化をもたらすと一部では期待されています。もちろん、罰則や具体的な義務を設けず、「男女の候補者の数ができる限り均等」になるよう政党に「自主的に取り組む」ことを求める法律ですから、これ自体が「掛け声」の列に加わるだけとなる可能性もあります。

    国民民主党党首が女性議員増を主張する意義

     今回意見募集を行うことになった玉木雄一郎議員の記事では、国民民主党による女性候補増加策を取り上げています。読者の皆さんの多くは、この記事は同党の活動の宣伝と捉えたかもしれません。実際この記事は、いろいろ策を練って頑張って女性候補を発掘していますよという国民民主党のアピールに過ぎないと思います。

     しかし、あるいはだからこそ、これは有意義な記事だとモデレーターは考えています。

     積極的に女性候補を擁立する政党が出現し、成功すれば、他党もこれに追随、対抗します。政党間の競争でこのような良い循環が生まれるならば、おのずと女性議員は増えるはずです。選挙を意識した有権者向けの宣伝、アピールは、民主主義の重要な歯車のひとつなのです。

     この歯車を回すにも止めるにも、重要なのは有権者の意識と行動です。これまで政治プレミアで掲載されてきた女性の政治参加に関する記事を見ていくと、女性議員を増やすべきだという昨今の政界の“表面的な潮流”に賛同する声が多いようです。

     一方、中にはこの流れに苦言を呈するコメントもあります。SNSなどの声も拾っていくと、その理由として女性議員の能力への疑問があるようです。たとえば、政治に関する実力が伴っていないのに女性だからという理由で議員にするのは男性差別である、といった議論がそうです。このような声は、政界の“裏の声”を代弁していると言えるかもしれません。

     こうした意見をお持ちの方々は、女性の議員や識者が述べる女性議員の重要性、「女性議員を増やすべきだ」論に賛同も納得もしないでしょう。だからこそ、所属議員と党幹部のほとんどを男性が占める党の男性党首が女性議員を増やす意思を明確にしたことは、有意義と言えます。

    女性議員と男性議員の能力差?

     もっとも、玉木議員の記事は国民民主党の方針を示したものであるため、女性の政治参加の拡大について多角的に論ずるには不足している面があります。また、女性議員増加に反対の方々にとっては、女性議員を増やすべきだという既存の議論に拒否感を覚える人も多いようです。そこで後半では、なぜ女性議員を増やしたほうがよいのか、モデレーターとして“そもそも論”を提供しておきたいと思います。

     先に述べたように、女性議員に関してよく言われるのは、政治に関する女性の能力の低さです。しかし、そもそも政治力とは何なのでしょうか?「低い」と主張する方々は、どのように測っているのでしょうか?

     一般的な意味での“能力”について考えてみましょう。例えば身体の大きさは平均的に見ると男性の方が大きいことはよく知られています。筋肉量も違います。結果、たとえば100メートル走の世界記録は男性の方が速いわけです。その一方で、みなさんの周りの方々を見てみれば、階段を軽々と上る女性もいれば、すぐにバテる男性もいるはずです。

     レスリング五輪メダリストの名前を出さなくとも、これをお読みの男性の方々よりも身体能力に秀でている女性が周辺に当たり前に存在することは、日ごろの経験から理解できるものと思います。人間の性別格差のうちでも明確に差がある身体に関する能力でさえ、女性と男性という群の差以上にそれぞれの性別内の個人間の差が大きいようなことは往々にしてあるわけです。

     そしてこれが社会で必要とされる人間としての能力となれば、性別格差よりも個人差が大きい傾向はより一層強まります。多様な能力に関して、自分よりも高い能力を一つでも持つ女性に出会ったことがないという男性はまずいないでしょう。政治に関する能力は男性のほうが女性よりも高いと当たり前のように言う人は、男性議員率が高い日本は女性議員率下位の他の国々と並び、政治に関して“先進国”の側にいると本気で思っているのでしょうか?

     これまで生きてきた中での経験を踏まえれば、よりよい候補を集めるために半分(男性)ではなく全体から登用したほうがよいはずだと、政党幹部という立場でなくても理解できるはずです。議員候補の選定の際に本当に政治力を重視しているなら、もっと女性議員率は高くなっているはずです。候補や議員が男性ばかりとなっている状況は、何らかの要因により、有為な人材を政界が集めることができていないことを端的に示しているものです。

    国会議員にまず求められる能力

     このように述べても、政治に関する能力に限定すれば男性のほうが優位と主張する方はいるかもしれません。根拠としては、法学部の進学者数や官僚の男性割合でも、まあなんでもいいでしょう。男性優位の社会という現状を性差による違いと転倒して理解する男性は昔から多いものです。

     ただし、社会科学分野の知識や法律行政関係の職務経験のようなものを、政治に関する能力の重要な、あるいは唯一の能力と解する人は、性差別的な思考を有した方々以外にもおられます。こうした考え方は、たとえば「決定」を重視する学者の言葉にも見え隠れしたりしています。

     もちろんモデレーターもそうした知識が皆無の国会議員がよいとは全く思いません。しかし、国会議員として、あるいは国会全体としてまず優先すべきは、有権者を代表する能力と考えます。国会議員全員が弁護士並みに法律に関する知識を有していたとしても、有権者を代表せずに自分勝手に政治的な決定を行っているとすれば、その国会は無能であると断じられます。

     これに対し、有権者が議員を選ぶ選挙がこれを担保しているのだという主張もあります。当然、どのような選挙制度も、あらゆる立場を平等に代表するような議員団を選出はできません。モデレーターも、あらゆる立場の人々の意見が平等に比例的に国会議員の構成に反映されるようにすべきだとも、できるとも思っていません。

     しかし、性別は人間の最も基本的な属性です。それが現状の社会において著しい不公平、不均衡の素因となっており、国会がこれを助長しているのであれば、改めるべきだと考えるのが自然に思います。議員がある選挙によって選ばれたという事実と、われわれ社会の意向が国会に反映されているかどうかは別の話なのです。

    中高年男性が支配する日本の国会

     以上を別の角度から言えば、女性議員を増やすことはわれわれを代表する能力を国会が回復するひとつの手段となります。逆に、中高年以上の男性で占められる現在の日本の国会は、われわれ有権者を十分に代表しているとは言えません。もし、そんなことはないと主張する人がいたとすれば、おそらくそれは中高年の男性でしょう。

     この不均衡を直感的に理解するには、データを見るのが手っ取り早いです。図は、2017年10月の25歳以上の日本人と衆議院議員(同月衆議院選当選者)の年齢層別の分布を比較的に見たものです。細かい数字を見なくとも、衆議院の議員構成が高年齢男性に著しく偏っていることが理解できるでしょう。

     数字を挙げておくと、2017年衆議院選で当選した議員のうち、50歳以上の男性は59.3%と約6割を占めます。40歳代を含めれば8割を超えます。一方、2017年10月の日本人の年齢別人口のうち25歳以上人口に占める50歳以上の男性は27.5%に過ぎず、40歳代を含めても37.2%にしかなりません。

    菅原琢さん作成のグラフを加工
    菅原琢さん作成のグラフを加工

     「一言」としては少し長くなりましたので、今回はここで切ろうと思います。このようないびつな議員構成の何が悪いのか等、モデレーターとして示しておきたい見解は「まとめ」に回そうと思います。

     今回は玉木議員の記事が意見募集対象となりました。国民民主党の施策への評価、あるいはこれで十分かなど、コメントをお書きいただければと思います。また、この政治プレミアでは女性議員の置かれている現状や、いかにして女性議員を増やすか等、他にもさまざまな論考が掲載されています。したがいまして、今回の意見募集対象記事に限らず、広く女性の政治参加に関してその是非、施策などについてご意見を表明したいという方がいらっしゃいましたら、この「一言」にコメントをお寄せいただければと思います。

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    プロフィール

    菅原琢

    菅原琢

    政治学者

    1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、共著「平成史:増補新版」など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」http://kokkai.sugawarataku.net/を運営。