政治プレミア

消費増税「そろばん勘定」と「国民感情」が不足 社会保障を立て直す

    野田佳彦氏=根岸基弘撮影
    野田佳彦氏=根岸基弘撮影

     衆院で新会派「社会保障を立て直す国民会議」を作った。

     首相として社会保障と税の一体改革の実現に全力で取り組んだ。緊急の課題であるにもかかわらず、議論は進んでいない。

     日本の社会保障制度の根幹は平均寿命が70歳にも達していなかった1960年前後に固まり、その後は微調整で乗り切ってきた。「人生100年」と言われる時代に持続可能な制度にするためには、今後の議論を一刻も早く始めないとならない。

     いわゆる「団塊の世代」が2022年ごろから後期高齢者になりはじめる。それからでは遅い。国会で議論を先導する役割を果たしたい。

     他党にも声をかけ、一緒に考え、実効ある政策を議員立法で打ち出す。まず政策で旗を立て、政策を中心に連携をしていく形を作っていきたい。

    参院定数増「それはないだろう」

     消費税は、昭和の時代に大平内閣(一般消費税)も中曽根内閣(売上税)も苦労して、平成の元年(89年)に竹下内閣のもとでようやく税率3%で導入された。その後も細川内閣で国民福祉税が頓挫し、村山内閣も橋本内閣(税率5%に引き上げ)も苦労した。

     平成の政治は消費税のために政権が倒れたり揺らいだりする呪縛にとらわれてきた。消費税が政争の具になり、与野党が同じ土俵で議論できないためだ。その呪縛を断ち切ろうとしたのが、12年6月の税と社会保障の一体改革をめぐる民主、自民、公明の3党合意だった。

     社会保障や税財政は政権が変わるたびにころころ変わるものではないという前提で考えなければならない。

     一方で、現在はなかなか難しい状況だ。景気後退局面での税率引き上げは困難だ。世界経済をみても減速傾向が表れている。さらに、19年10月に予定されている税率引き上げには多くの問題がある。

     増税を国民にお願いする時は二つの「かんじょう」が大切だ。それは「そろばん勘定」と「国民感情」だ。

     「そろばん勘定」については、19年度の増収は10月からのため半年分になり、2兆円弱だ。ところが、ポイント還元などの消費増税対策は2兆円を超える。増収よりもバラマキの方が多い。駆け込み需要と反動減を平準化するための対策はあってしかるべきだが、やりすぎだ。

     「社会保障の充実・安定と財政健全化のためなら増税もやむを得ない」と考えていた国民を裏切る行為だ。なんのための増税かという根源的な政策不信を招くことになる。

     「国民感情」はやはり、参院の定数6増だ。

     私は衆院解散を表明した、安倍晋三自民党総裁(当時)との党首討論(12年11月)でも「まず身を切る改革を」と言った。税率引き上げの直前に定数増というのは国民感情からすれば「それはないだろう」となる。

     今回の税率引き上げは「そろばん勘定」と「国民感情」の二つで間違っている。国民にもっとわかりやすく、堂々と負担をお願いしないといけないのに逃げている。

    受益と負担の関係見えない

     今後、高齢化はさらに加速し、社会保障費の増大は避けられない。そのことをきちんと説明したうえで、だからこそ社会保障を維持するために消費税が必要であり、その受益と負担の相関関係がわかるようにする必要がある。今はそこがわかりにくくなっている。

     北欧諸国などは間接税の税率は日本よりはるかに高いが、痛税感はそれほどない。それは負担に見合ったサービスが受けられるという安心感があるからだ。それが成り立つためには、政府に対する信頼が必要だ。

     今、政府への信頼感があると言えるだろうか。目指すべき社会保障の将来像も示せていない。税率引き上げはかなり厳しい状況にあると言わざるを得ない。

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    プロフィール

    野田佳彦

    野田佳彦

    元首相

    1957年生まれ。93年衆院初当選。民主党幹事長代理、副財務相、財務相などを歴任。衆院千葉4区、当選8回。