
立憲民主党の逢坂誠二政調会長が「自国の空域の一部の管制を米国に委ねている日本は、真の独立国、主権国家といえるのか」と指摘し、「日本が真の独立国家となるために、中長期的目線で取り組むべき問題」と説いている。日米地位協定に関しては1960年以来さまざまな議論が国会等でなされてきた。しかし、現在に至っても国民レベルで成熟した議論が行われているとは言い難いのが実態であろう。
特に、東アジアの安全保障環境が変化しつつある昨今は、同地域で尖閣問題、北朝鮮問題など日本の安全保障に直結する事件が頻発するようになった。されば、ここは原点に戻り、日米相互安全保障条約と日米地位協定の問題を改めてじっくり議論し、国民の間に最低限のコンセンサスを醸成することが重要ではないかと考えている。
逢坂氏は「いかなる外部の支配からも自由であるのが独立国」であるにもかかわらず、「日本は領空、出入国、警察など、米国の制限のもとにある」と主張する。同時に、「もちろん日米同盟は重要なもの」であり、「日本の防衛力をどう位置づけるかという問題もある」と国家安全保障の現実的な側面にも言及している。
日米地位協定は、現在米国が北大西洋条約機構(NATO)諸国など30カ国以上と締結しているほぼ同様の地位協定の一つであり、これら地位協定はいずれも駐留米軍と接受国との間の法律関係を規定する国際約束である。通常米軍が駐留する場合、関連地位協定に基づき接受国法令の空域管制、第一次裁判権、警察権などに一定の制限が課されることはむしろ一般的だ。もし、NATOを含むこれら諸国が「米国の制限のもとにある」のであれば、米国の同盟国はすべて「真の独立国」ではないことになる。
こう考えれば、日米地位協定で議論すべき真の問題は「日本が真の独立国であるか否か」ではなく、むしろ日本が同盟国として「受ける利益」と「負担すべき不利益」の間の「適当なバランスは何か」という問題に帰着するのではなかろうか。
果たして、米国の他の同盟国とも比較しつつ、日本は在日米軍にいかなる権利義務を認めるべきなのか、読者の皆さんの見方はいかがでしょうか。
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。
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