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「100年かけて辞書を編む」英国の底力 森を歩き、未来の山を作る

小倉孝保・論説委員
17冊に分けて作成された中世ラテン語辞書。最初の分冊「A・B」は1975年の出版だ=2015年1月29日、ロンドンの英国学士院で小倉孝保撮影
17冊に分けて作成された中世ラテン語辞書。最初の分冊「A・B」は1975年の出版だ=2015年1月29日、ロンドンの英国学士院で小倉孝保撮影

 欧州連合(EU)からの離脱を巡り、英国政治は混乱の極みである。

 「落日の英国を象徴しているね」

 「大局的見地から行動する政治家がいないのかね」

 連日の混乱を眼前に、こんな感想を口にしたくなるのもわからないではない。ただ、英国から学ぶべきものがないのかといえば、そんなことはない。英国人には底力がある。その一つが、長い時間をかけて一つのものを作り上げようとする姿勢である。自分たち世代のためではなく、後世の人々のことを考えて行動する能力だ。自分たちが生きている間に完成しそうもないものを作り上げることに、英国人は楽しみを見いだす力を持っている。その象徴として1冊の辞書を紹介したい。

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論説委員

1964年生まれ。88年入社。カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局長、外信部長、編集編成局次長を経て現職。英外国特派員協会賞や小学館ノンフィクション大賞、ミズノスポーツライター最優秀賞の受賞歴がある。