「景気回復の風」あなたに届いているか ご意見募集

香山リカ・精神科医
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香山リカ氏=平野幸久撮影
香山リカ氏=平野幸久撮影

 安倍晋三首相は2015年度の当初予算成立時に記者団に対し、「景気回復の温かい波をこれからもしっかりと全国津々浦々にお届けするために全力を尽くしていきたい」と述べ、今年の年頭所感では「景気回復の温かい風が全国津々浦々に届き始める中で、地方の税収は過去最高となった」としている。

 つまり、アベノミクスは″温かい風”を吹かせることに成功した、ということになる。

 その風は、あなたのところにも届いただろうか。診察室で多くの人に会う限り、私はそれを感じたことはない。それどころか、生活が苦しくなり、それがひきがねでうつ病などの心の病になる人もいっこうに減らない。

 山井和則さんは、「アベノミクスは物価を上げれば賃金も上がるだろうという考え方だ。ところが物価は上がっているが、賃金上昇が追いつかず、実質賃金が下がって国民生活が苦しくなっている」と書いている(記事はこちら)。

 では、その実質賃金(毎月勤労統計の調査対象の入れ替え前後で共通する事業所を比較した参考値)はどうなっているかといえば、山井さんの文章にもあるように、厚生労働省がデータの公表を控えており、わからない。

 その前には、統計処理で基本的な不正があり、野党は「実際以上に賃金が伸びたように発表したのではないか」と主張する。さらに、厚労省は不正があった期間の資料を紛失・廃棄しており、2004~11年の8年分の賃金の実態ははっきりしない。

 たしかに学生の就職率の上昇など、景気回復を感じさせる動きもある。とはいえ、こうして「賃金が上がったか下がったか、もはやわからない」などというとんでもない事態も起きている。

 どうだろう。あなたのところに景気回復の温かい風は届いているだろうか。

 それとも山井さんが言うようにそれは「アベノミクス偽装」の結果にしかすぎないのだろうか。生活に基づく話を聞かせてほしい。

香山リカ

精神科医

1960年北海道生まれ。東京医科大卒。専門は精神病理学。医師の立場から現代人の心の問題について発言を続ける。立教大学現代心理学部教授。