ふらっと東アジア

対話を諦められない北朝鮮の事情

米村耕一・前ソウル支局長
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朝鮮人民軍前線・西部戦線防御部隊の火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=2019年5月9日、朝鮮中央通信・朝鮮通信
朝鮮人民軍前線・西部戦線防御部隊の火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=2019年5月9日、朝鮮中央通信・朝鮮通信

 北朝鮮は5月4日と9日に相次いで新型と見られる短距離ミサイル発射訓練を行ったのみならず、21日には北朝鮮の国連大使が異例の米国批判の記者会見を行うなど、米国との対立姿勢を強めている。しかし、これが過去1年余り続いた「対話の季節」の終焉(しゅうえん)だとみるのは時期尚早だ。

 北朝鮮内部に目を向ければ、当面は安定した国際情勢を望まざるを得ない金正恩(キム・ジョンウン)政権の事情が垣間見えるからだ。こうした事情は、日本政府が意欲を見せる日朝協議の行方にも影響を与える可能性がありそうだ。

 2月下旬にハノイで開かれた米朝首脳会談は事実上の決裂に終わった。会談の内容や米朝双方の戦略についてはさまざまな分析や報道が出ているが、ざくっと大枠でとらえれば、核・ミサイル問題の解決策に関する米国と北朝鮮の立場の差は「大か小か」の違いにつきる。

 つまり、核関連施設、核物質、そして核兵器まで包括的に全ての廃棄と引き換えに経済制裁の解除や経済支援を提供する「ビッグディール」を追求する米国に対して、北朝鮮は核施設の一部の閉鎖や公開と引き換えに経済制裁の部分解除などを求め、非核化を極めて限定的、かつ段階的に進める「スモールディール」を望んでいる。

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米村耕一

前ソウル支局長

1998年入社。政治部、中国総局(北京)、ソウル支局長などを経て2018年から外信部副部長。著書は「北朝鮮・絶対秘密文書 体制を脅かす『悪党』たち」。