「合意なき性交は処罰」どう考える 被害者支援と防止策は? ご意見募集

江川紹子・ジャーナリスト
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江川紹子さん
江川紹子さん

 3月に性犯罪事件で1審無罪判決が4件あったことから、性被害に対する処罰のあり方がクローズアップされています。

 この問題を考えるにあたって、忘れてはならないことがいくつかあります。

 第一に、裁判では有罪立証は検察の責任である、という刑事司法の原則です。メディアでも裁判所批判の声は紹介されていますが、この問題に関する議論では、なぜか各事件での検察の捜査・立証は適正かつ十分なものだったか、という点がまるで抜けています。

 第二に、日本の刑事司法では圧倒的に有罪率が高いという事実。これは性犯罪被害でも同じです。最新の司法統計(2017年)から、1審の有罪率を計算してみると、刑事事件全体で99.8%。性的な犯罪(統計の項目は「わいせつ、強制性交等及び重婚の罪」)でも、有罪率は99.5%で、同年の無罪判決は7件にとどまります。裁判で被告人が無罪を主張すればバンバン無罪判決が出る、という状況ではありません。

 第三に、その一方で、捜査機関に被害を訴えても、法律の要件を満たさず、有罪判決が見込めないということで、裁判に至らないケースが多いのも事実です。17年の検察統計では、強制わいせつの起訴率は37.8%、強制性交等では32.7%でした。立件は無理だからと受理されなかったり、被害者があきらめ(あるいは、あきらめさせられ)ていたりするケースもたくさんあるでしょう。

 心の傷があまりに深く、周囲の目も気になって、被害を訴えるのに時間がかかり、すでに時効になっていたり、証拠を集めることが難しくて立件できなくなったりというケースも少なくないと思われます。

 被害経験者や支援者などから、性犯罪の厳罰化を求める声が上がっています。被害者が処罰感情を抱くのは当然です。とりわけ、加害者から「暴行や脅迫」などにより、被害者が抵抗できない状態になった、という犯罪が成立するための要件をなくし、双方の合意がない性交は犯罪とみなして処罰の対象にすべきだ、という主張が、このところクローズアップされています。

 今回の辰巳孝太郎参院議員の意見も、それを代弁したものと言えましょう。

 一方、刑事罰は、国家が個人の権利の一部または全部を強制的に剥奪するものであり、冤罪(えんざい)が生まれないよう、慎重な手続きが必要なのは、性被害の事件においても同じです。同意がない性交はすべて処罰できるようにした時、新たな冤罪(えんざい)が生まれる余地はないでしょうか。

 さらに、私たちの社会は、刑事罰以外の被害者支援はどうなのか、このような被害を防ぐための施策は十分なのか、という問題も考えなければ、と思います。

 性被害をめぐる刑罰や被害者支援のあり方、性被害を防ぐための施策についてご意見をお寄せください。

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江川紹子

ジャーナリスト

1958年生まれ。神奈川新聞記者を経てフリー。95年、オウム報道で菊池寛賞。著書に「オウム事件はなぜ起きたか」「名張毒ブドウ酒殺人事件」「『歴史認識』とは何か――対立の構図を超えて」(大沼保昭氏と共著)など。ツイッター@amneris84