浜田靖一さんの寄稿に一言

水産物禁輸「敗訴」は外交の汚点か 漁業振興どうしたらいい? ご意見募集

櫻田淳・東洋学園大教授
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櫻田淳さん
櫻田淳さん

 このたび、読者に喚起するのは、浜田靖一氏(衆議院議員)の論稿をたたき台にした議論である。福島を含む8県産の水産物を対象にして韓国が発動していた輸入禁止措置は、4月中旬、世界貿易機関(WTO)上級委員会での判断の結果、その継続が容認された。浜田氏は、「予想外の逆転敗訴」を招いた外務省の対応における「油断」を批判している。浜田氏の論稿に即して議論を深めるべきは、次の2点である。

 第一に、浜田氏が示したような日本外交への評価は、果たして正しいであろうか。確かに、浜田氏が指摘するように、「昨年9月にも国際捕鯨委員会(IWC)総会で商業捕鯨再開などを求めた日本側の提案は否決されており、水産外交は2連敗といえる」かもしれない。けれども、WTO紛争解決機関会合では米国、カナダや欧州連合(EU)に加え、コロンビア、ブラジル、ペルー、サウジアラビアといった10以上の国・地域が日本に理解を示したと報じられている。フィリピン政府は、福島産水産物の輸入停止の解除を決定した。日本政府は、韓国産水産物輸入に際しての検査強化を実施し、それは、韓国に対する実質上の報復措置と受けとめられている。このたびのWTO裁定に際しても、日本の対外的な「声望」は何ら損ねられていないというのが、自然な評価であろう。

 第二に、むしろ顧みられるべきは、日本における水産業の比重が、どれだけ正当に認識されるかということである。「安全保障の観点からも水産業は重要だと思う。四方を海に囲まれた日本にとって、主権を主張するためにも海で働いている漁師さんたちの存在は欠かせないと考えるからだ」という浜田氏の見解に同意するかはともかくとして、「海」に関わろうとする姿勢が、日本の国情に照らし合わせて最も大事なものであるのは、間違いない。江戸期、特に三陸沖で取れた煎海鼠(いりこ)・乾鮑(ほしあわび)・鱶鰭(ふかひれ)が「俵物三品」として珍重された故事は、当代にも通ずるものであろう。

 ちなみに、日本政府は、「農林水産省に各国との交渉から輸出審査まで一元化する組織を来春にも新設する」方針を明らかにしている。この方針を報じた「日本経済新聞」記事(6月4日配信)によれば、「農水省に『農林水産物・食品輸出促進本部(仮称)』を新設する。各省庁との総合調整を担う。輸出に関する厚生労働省の審査業務の多くは農水省に移す。新組織の下で各国との交渉から輸出促進策、審査まで一元的に担う。各国の輸入規制に応じて、政策づくりから実務まで一貫した対応ができるようにする」とのことである。

 こうした政府方針への評価を含めて、浜田氏の問題意識は、どのように受けとめられるべきか。読者各位には、それを承りたい。

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櫻田淳

東洋学園大教授

1965年生まれ。専門は国際政治学、安全保障。衆院議員政策担当秘書の経験もある。著書に「国家の役割とは何か」「『常識』としての保守主義」など。フェイスブックでも時事問題についての寸評を発信。