浅尾慶一郎氏の寄稿に一言

「所得倍増」「最低時給1200円」どう考える? ご意見募集

西田亮介・東京工業大学准教授
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西田亮介さん
西田亮介さん

 浅尾慶一郎氏は令和に入って「所得を増やそう」を自らのキャッチフレーズにしたという。平成に入って、家計所得はほぼ横ばいで推移する一方で、消費税は増額、社会保障費も引き上げられた。国民にとって1人あたり所得増ほど魅力的な提案はほかにあるまい。

 なにも国民だけではない。浅尾氏は日本が抱える諸問題の解決にも、1人あたり所得増が重要だと述べ、直面する重要課題を社会保障費増、政府債務残高、安全保障環境とする。1人あたり所得増が実現すれば、家計における社会保障費の負担は低減するし、税収増は債務残高削減に貢献する。また国内総生産(GDP)が伸びれば、防衛費をGDP費1%に据え置いても、防衛費を捻出できるというのが浅尾氏の議論だ。

 浅尾氏は過去にも所得増加についての記事を寄稿している。

最低賃金1200円は景気刺激の切り札だ 「人材が資源」の時代にすべきこと

 日本の労働法制において、給与と、より具体的にいうなら時給と労働時間は密接に関連している。単純に考えれば、時給に労働時間をかけ合わせ、各種手当や場合によってはボーナス、社会保障費等を考慮して、給与総額が決まる。

 日本の現在の時給水準はどのようなものだろうか。現状、厚生労働省「平成30年度地域別最低賃金改定状況」によれば、全国加重平均額が874円、上位5都道府県は東京(985円)、神奈川(983円)、大阪(936円)、愛知(898円)埼玉(898円)。反対に下位は鹿児島(761円)、青森、岩手、秋田、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄(それぞれ762円)という状況だ。

詳細は、下記参照のこと。

厚生労働省「平成30年度地域別最低賃金改定状況」

 浅尾氏によれば「我が国の全国平均の最低賃金854円は1人・労働時間1時間あたりGDPと比較すると27.7%にしかならず、欧州の平均50%と比べると低すぎるレベル」だという。

 浅尾氏の提案と根拠はシンプルだ。日本の最低時給を欧州水準にする、労働時間1時間あたりGDP27.7%を、50%に引き上げるとおよそ1200円という数字が出てくるということだ。全国平均を基準にするとき、2000時間最低賃金でフルタイム働くと考えると、単純計算で年収が70万円増加することになる。

 正社員の有効求人倍率1.10という数字を挙げながら、最低時給を引き上げたとしても失業率が増えるとは考えにくく、同時に賃金増に耐えられない企業の廃業を促し、企業の新陳代謝の契機とすべきだというのが当時の浅尾氏の議論だ。

 一向に向上しない日本の労働生産性と働き方改革、賃上げの実現は急務で、具体的な政策が求められているいま、改めて傾聴に値するようにも思われる。

 最近では山本太郎氏率いる「れいわ新選組」などからも、政権とは別のアプローチの経済財政の政策提案がなされているだけになおさらだ。

 読者の皆さんは「所得を増やす」「最低時給1200円」の提案をどのように評価しますか。また、生活に密着する所得増への道筋をどのようにデザインしていくべきだと考えますか。

 ご意見をお待ちしています。

西田亮介

東京工業大学准教授

1983年生まれ。博士(政策・メディア)。専門は社会学、公共政策学。著書に「ネット選挙--解禁がもたらす日本社会の変容」「情報武装する政治」。ツイッター @Ryosuke_Nishida