
自由民主党の長島昭久元副防衛相は、米国が提唱したペルシャ湾の「有志連合」構想について、「日本は大国の一つとして地域の秩序や航行の安全などの国際公益に対しても責任を果たす姿勢を国際社会に発信する必要がある」と指摘し、「安保法制をはじめ現行法の枠組みの中で最大限、何ができるかをしっかり考えるべきだ」と説いている。
イラン核合意から離脱した米国は今年5月以降、イランに対する経済制裁を強化する一方、8月には同盟国・友好国に対しペルシャ湾、ホルムズ海峡などでの安全航行を確保するための有志連合に参加するよう呼び掛けている。だが、振り返ってみれば、日本にとって中東がらみの「有志連合」なるものへの参加要請は決して今回が初めてではない。
「有志連合」と聞くと多くの読者は1991年の湾岸戦争を思い浮かべるだろう。当時日本は130億ドルもの資金協力を行ったにもかかわらず、米国からは「too little, too late」と酷評された。だが、今回の「有志連合」構想は、湾岸戦争のあった91年よりも、日本がペルシャ湾で初めて参加を要請された87年の「有志連合」のケースに近いと思われる。
当時はイラン・イラク戦争の末期、イランはペルシャ湾内航行タンカーへの攻撃を激化させていた。米国は日本に対し自衛隊艦船などの派遣を求めたが、最終的に日本は海上保安庁の巡視船も含め、一切の艦船の派遣を拒否し、ペルシャ湾内の航行安全用機材等の供与でお茶を濁した経緯がある。この問題は日本にとって常に「古くて新しい」問題なのだ。
長島氏は「護衛艦派遣ありきでなくてよい」「現行法の範囲内で積極的に関わること」は可能とし、「ソマリア沖にいる護衛艦と哨戒機を状況に応じて段階的に活用すること」を提案している。同時に「イランに対してはきちんと説明する」「ホルムズ海峡に行かなくても、紅海やバブルマンデブ海峡できちんと役割を果たせば」よいとも述べている。
だが、これに対しては「日本がペルシャ湾で不必要な戦争に巻き込まれる」危険があるとか、「自衛隊を派遣するなら、特措法を作って出すべきだ」といった批判もあり得よう。「ペルシャ湾の有志連合」問題は今も、第二次世界大戦後の日本の、国家としての生きざまを問い続けているようだ。輸入原油の9割を中東湾岸地域に依存する日本が、日本籍または日本人所有のタンカーを自衛隊で守るのは当然なのか。それとも、何が起きようとも、日本は「海外派兵」など行うべきではないのか。読者の皆さんの見方はいかがだろうか。
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。
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