
このたび、読者各位に喚起するのは、二階俊博(自民党幹事長)、山口那津男(公明党代表)両氏の論稿をたたき台にした議論である。自民党と公明党による連立枠組みが樹立して20年、公明党という日本独特の政党が果たしてきた役割を、どのように評価し、その今後を、どのように展望するのか。それを議論してみたいというのが、このたびの呼び掛けの趣旨である。
そもそも、筆者が理解する限り、公明党は「命あっての物種」「花より団子」という言葉に表される日本衆庶層の現世的な欲求には、最もまじめに応えてきた政党である。自民党、社会党、共産党のように、「55年体制」期に存在していた他の政党とは異なり、公明党は、多分に翻訳可能な政治理念に裏付けられた政党ではない。あえていえば、「現世福祉優先」主義とも評すべきものが、公明党の政策上の柱であろう。「軽減税率の実施、使い道を変更した全世代型社会保障の推進、短期的な平準化対策」が直近の政策上の成果であるとする山口氏の認識は、そうした公明党の性格を直接に反映している。また、「憲法を改正しなければ自衛隊が国民の役に立たないということではないだろう」という山口氏の見解に表された憲法改正案件への抑制的な姿勢にしても、それは、憲法9条に依拠した社会党やその係累のように理念的なものではなく、前に触れた「命あっての物種」の素朴な心情に根差したものと見るのが適切である。
故に、公明党の政策志向は、自民党が憲法改正に象徴される理念先行の政策案件ではなく、民生安定を趣旨とした福祉志向の政策案件に取り組んだ時にこそ、うまく回ったといえる。その意味では、「公明党がいたから、自民党の政策が相当な部分でまろやかな形となり、国民に理解してもらえるようになった」という二階氏の指摘は、誠に至当なものであろう。
もっとも、現世福祉優先に傾いた公明党の政策志向は、衆庶層の生活実感とは直接に結び付かない政策課題を前にした場合、「時代の要請」に応えるものになり得るであろうか。公明党の憲法改正案件への姿勢は、憲法改正をもっぱら「国家の威信」を担保するものとして位置付けてきた自民党右派・民族主義者層の主張にはあらがうものになるかもしれないけれども、それを「国際秩序の安定を通じて国民の安全を確保する」仕掛けと見ている主張には応えられないであろう。公明党の永年の現世福祉優先志向は、憲法改正案件に限らず、一定の程度までの「長い射程と広い視野」を要求される政策課題には、どこまで整合するのか。
自民党と公明党の連立の行方を左右するのは、「長い射程と広い視野」を要求される政策課題への姿勢であろう。読者各位の所見を承りたい。
皆さんはどう感じますか?コメントをお寄せください
投稿フォームはこちら