「ひそかに進む」さらなる消費増税に向けた準備

古川元久・元国家戦略担当相  
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古川元久氏=須藤孝撮影
古川元久氏=須藤孝撮影

 消費税が10月から大きく変質した。10%への増税と軽減税率導入に隠れているが、税負担者がこれまでの法律上は「事業者」だが実質的には「消費者」から、名実ともに「事業者」になるという、税の本質が大きく変わった。

消費者に転嫁できず

 もはや消費税は導入の際に当時の与党自民党が「赤字法人課税だ」などと猛反発した「小売売上税」そのものだ。今後、中小零細企業は消費税負担を消費者に転嫁できず、収益が圧迫されることになるのは必至だ。きちんとした説明責任も果たさずに、このような大きな税の変質が行われることと、いまの自民党が以前とは異なり、まったく中小零細事業者のことを考えなくなってしまっていることに強い憤りを覚える。

 そもそも法律上、最初から消費税の納税義務者は「事業者」であり、「消費者」とはなっていない。導入議論の際、これに対して自民党から激しい反発があった。「これでは売り上げにかかる外形標準課税、赤字法人課税だ」「中小企業はその負担を消費者に転嫁できない」――。

 こうした批判をかわすために当時の大蔵省が取り組んだのは「確実に消費者に転嫁させる」ことだ。個別の取引ごとに1対1対応で消費税分を転嫁させるよう指導。前回の引き上げまでは「消費税還元セール」などの値下げも禁止し、正しく転嫁しないと摘発されるぐらい厳しく転嫁することを徹底した。つまり、形式的には「事業者負担」であっても、実質的には「消費者負担」の税として定着させたのだ。

消費税は「コスト」に

 しかし、軽減税率の導入に伴う混乱回避などから、今回の増税に際しては1対1対応で価格に転嫁することを放棄した。政府は「10月1日から値段を変えなくてもいい」「税率の違うイートインとテークアウトの値段を同じにしてもいい」などと指導し、いつ、どのように増税分を価格に転嫁するか、全て事業者が決められるようになった。

 今後、消費税は事業者にとって法人税などと同様、事業にかかるコストの一つであり、そのコスト転嫁の方法は、事業者の自由な価格設定にゆだねられることになる。例えば、仮に10%と8%品目の売上比率が半々だった場合、全商品を1%値上げして対応すると…

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古川元久

元国家戦略担当相  

1965年生まれ。大蔵省を経て96年衆院初当選。官房副長官、衆院内閣委員長、国民民主党幹事長などを歴任。国民民主党代表代行、党憲法調査会長。衆院愛知2区、当選8回。