麗しの島から

「共産党反対」だけで摘発? 中国が香港に導入狙う国家安全条例

福岡静哉・台北特派員
  • 文字
  • 印刷
国家安全条例が制定されれば、「革命」を掲げるだけでも逮捕されるおそれがある=香港・尖沙咀で2019年10月12日、福岡静哉撮影
国家安全条例が制定されれば、「革命」を掲げるだけでも逮捕されるおそれがある=香港・尖沙咀で2019年10月12日、福岡静哉撮影

 香港で、中国政府への反逆行為などを禁じる「国家安全条例案」についての議論が再び活発化している。この条例が成立すれば、警察は政府への抗議活動をこれまで以上に容易に取り締まれるようになる。中国政府の長年にわたる「宿願」だが、民主派や市民の強い反発で実現していない。デモ隊と警察の衝突が一段とエスカレートする中で、香港の親中派からは、中国政府主導の条例制定を予測する声も出始めている。

共産党の方針に反対するだけで摘発の恐れ

 香港の英国総領事館前で市民がガソリンをかぶり、自らの体にライターで火を放つ――。2015年に大ヒットした香港映画「十年」で描かれた壮絶な場面は今も、多くの香港市民の脳裏に焼き付いている。

 「十年」は、25年の香港を舞台に、中国による統制が強まった社会を描く5本のオムニバスで構成される。「焼身自殺者」はその一つだ。「香港独立」を主張する青年が国家安全条例違反で逮捕されたことに抗議して市民が焼身自殺する、というストーリーだ。中国本土では上映禁止となったが、香港版アカデミー賞とも言われる「香港フィルムアワード」で最優秀作品賞を受賞した。

 香港基本法(憲法)の23条は「反逆、国家分裂、反乱扇動、中央政府転覆、国家機密窃取を禁止する法律」の制定を香港政府に義務づけている。この内容を反映した国家安全条例の制定は、香港政府に課せられた最大の「任務」の一つだ。仮に施行されれば、今年6月以降続いている香港政府への抗議デモも含め、共産党の方針に反する行為はいずれも「反乱扇動」などを理由に摘発される恐れがある。

 中国が23条を香港基本法に明記したのは、香港が「政府転覆の拠点」となることへの強い警戒感があったためだと言われている。サッチャー英首相(当時)の外交顧問などとして香港返還交渉に深く関与したパーシー・クラドック氏の回顧録によると、江沢民国家主席(当時)はクラドック氏との会談で「…

この記事は有料記事です。

残り2120文字(全文2920文字)

福岡静哉

台北特派員

1978年和歌山県生まれ。2001年入社。久留米支局、鹿児島支局、政治部などを経て2017年4月、台北に赴任した。香港、マカオのニュースもカバーする。