ウェストエンドから

英政界は「異端」の時代なのか?

服部正法・欧州総局長
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社会民主主義の衰退とブレグジットとの関係を説明する著書を出版したエイドリアン・ウィリアムソン氏=ロンドンで2019年11月12日、服部正法撮影
社会民主主義の衰退とブレグジットとの関係を説明する著書を出版したエイドリアン・ウィリアムソン氏=ロンドンで2019年11月12日、服部正法撮影

 英国では12月12日に、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=からの離脱)の方向性を決める総選挙が実施される。与党・保守党、最大野党・労働党の2大政党をはじめ、各党がブレグジットに対する方針や見解を示し、選挙戦を展開中だ。

 ブレグジットを英国の「政界歴史地図」に落とし込んで考えてみると、半世紀前の英政界で異彩を放った2人の政治家の影が浮かび上がってくる。保守党のイノック・パウエルと労働党のトニー・ベン。2人とも当時の政界では両極に位置し、互いに際立った個性で強い存在感を誇示した「異端」とも言える政治家だ。

 ブレグジットの背景を探る際に、この2人に着目するというのは私のオリジナルではない。英国王立歴史学会フェローで勅選弁護士のエイドリアン・ウィリアムソン氏が、最近出版した「Europe and the decline of social democracy in Britain from Attlee to Brexit(欧州、そして英国における社会民主主義の衰退。アトリーからブレグジットへ)」の中で、欧州統合への参加機運が強まった1960、70年代の英国で、これに強く異議を唱え続けた人物としてこの2人を挙げている。この本の内容とウィリアムソン氏への私のインタビューに沿って、ブレグジットと2人の関係を考察したいと思う。

英国の社会民主主義と欧州志向

 第二次大戦で大陸全土が荒廃した戦後の西ヨーロッパでは、社会民主主義的な政治が広がった。社会主義陣営には属さず自由主義経済を是とする西ヨーロッパであっても、国民生活の救済が最優先となり、国家が介入し、計画的に経済復興を進めようという動きが強まったためだ。

 ウィリアムソン氏は同書で、英国も同様だったことを強調する。戦後すぐには労働党アトリー政権が、一時は英国の代名詞ともなった「ゆりかごから墓場まで」の高福祉社会を実現した。その後に政…

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服部正法

欧州総局長

1970年生まれ。99年、毎日新聞入社。奈良支局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4月~16年3月、ヨハネスブルク支局長、アフリカ特派員として49カ国を担当する。19年4月から現職。著書に「ジハード大陸:テロ最前線のアフリカを行く」(白水社)。