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公邸がない?「官僚批判」気にするEUトップの住宅事情

八田浩輔・ブリュッセル特派員
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ブリュッセルの欧州委員会本部ビル=八田浩輔撮影
ブリュッセルの欧州委員会本部ビル=八田浩輔撮影

 欧州連合(EU)トップには公邸がない。3万人を超す職員を抱えるEUの官僚機構を率いるユンケル欧州委員長(64)は、5年間の任期をブリュッセルのアパートメントホテルで過ごした。来月にも就任する見通しになったフォンデアライエン次期欧州委員長(61)は、職場となるEU本部ビルの一室を改装して寝泊まりするのだという。

コスト節約と「質素」を強調

 EUの行政執行機関、欧州委員会の本部はブリュッセルの中心部にある。上から見ると十字形のデザインが特徴で、1967年に完成した。「ベルレモン」という庁舎名は同地に17世紀に建てられた女子修道院の名前に由来する。

 ベルレモン庁舎には、外交をつかさどる対外行動庁を除く欧州委員会の主要な部局と、閣僚にあたる欧州委員の執務室が入る。東京・霞が関の中央省庁が一つにまとまって入居しているとイメージすればいいかもしれない。ブレグジット(英国のEU離脱)交渉もこの建物で行われてきた。

 欧州委員長の執務室があるベルレモン庁舎13階の25平方メートルの小部屋が、フォンデアライエン氏の「新居」になる。報道官によると、目的の一つは警備コストの節約。庁舎は既に24時間体制で警備されており、サイバーセキュリティーを含めて新たな対策がほぼ必要ない。入退庁時の混雑を避ける意図もあるという。ブリュッセルの道路の混雑具合は欧州の主要都市でも最悪レベルとされており、庁舎周辺は通勤ラッシュ時の交通渋滞が特にひどい。

 もっともフォンデアライエン氏にとって、職場で寝泊まりすることは苦ではないようだ。前職のドイツ国防相時代には、ベルリンの国防省の一室にベッドを置いて暮らしていたという。独メディアは、公務のない週末などは夫と7人の子供が暮らすドイツ北部ハノーバーの私邸に戻って過ごす予定だと伝えている。ブリュッセルでの「新居」も最低限の改装にとどめて「質素」(報道官)であることを強調している…

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八田浩輔

ブリュッセル特派員

2004年入社。京都支局、科学環境部、外信部などを経て16年春から現職。欧州連合(EU)を中心に欧州の政治や安全保障を担当している。エネルギー問題、生命科学と社会の関係も取材テーマで、これまでに科学ジャーナリスト賞、日本医学ジャーナリスト協会賞を受賞(ともに13年)。共著に「偽りの薬」(毎日新聞社)。