麗しの島から

香港区議選(上)逆風なのに勝った親中派の選挙区を歩いた

福岡静哉・台北特派員
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民主派候補の顔と姓の部分が切り裂かれた選挙用の横断幕。右奥の親中派候補の横断幕は無傷だった=香港九竜半島・安達選挙区で2019年12月1日、福岡静哉撮影
民主派候補の顔と姓の部分が切り裂かれた選挙用の横断幕。右奥の親中派候補の横断幕は無傷だった=香港九竜半島・安達選挙区で2019年12月1日、福岡静哉撮影

 香港の区議選(11月24日投開票)は、民主派の歴史的な大勝に終わった。親中派には極めて強い逆風が吹いていて、しかも完全小選挙区制だったのに勝ち残った親中派59人の選挙区はいったい、どんな地域なのか。勝利した民主派の新人らには、どのような課題が待ち受けているのか。来年1月1日に新区議が就任するのを前に、改めて現場を取材した。2回に分けて報告したい。

議席を死守した59人の親中派

 香港の区議選は452議席で争われ、いずれも1人しか当選できない小選挙区。議員の多くは、親中派と民主派のどちらかに区分される。2015年区議選(当時は431議席)で126議席だった民主派は385議席へと躍進し、298議席を擁した親中派は今回、59議席と惨敗した。

 私の脳裏をよぎったのは、民主党(当時)が圧勝して政権交代を果たした09年の衆院選だ。親中派の59人はまるで、300の小選挙区でしぶとく勝ち残った64人の自民党議員のようだと感じた。私は当時、5選挙区で自民前職が3議席を死守した鹿児島県で取材し、保守地盤での自民党の底力を思い知らされた。

 香港政府への抗議デモが激化する強烈な逆風下で当選した親中派は、党派別では、親中派の最大政党「民主建港協進連盟」(民建連)21人▽親中国の労働組合が支援する「工会連合会」5人▽経済界に支持者が多い自由党5人――など。このうち親中派が大差で勝った2選挙区を取材した。

「赤い選挙区」

 香港・九竜半島の観塘区は、40選挙区に分かれる。観塘駅からバスで20分ほどの山間部にあるのが安達選挙区だ。近年、開発が進み、高層の公営住宅が林立する。親中派の許有為氏(37)と、民主派の蕭浩然氏(25)の新人2氏による事実上の一騎打ちとなり、許氏が3499票を獲得して初当選。蕭氏は2393票にとどまり、得票率で18ポイントの大差がついた。

 安達選挙区の特徴は、1997年の中国返還以降に中国本土から移り住んだ「新移民」が多いことだ。政府の人口統計によると、本土から香港に来た「居住7年以内」の新移民総数のうち観塘区の住民が占める割合は、06年=12%▽11年=13%▽16年=10%と安定して高水準。香港紙によると、観塘区の中でも新移民は安達選挙区の公営住宅に集中しているという。香港では7年以上の居住歴があれば永住権を申請でき、認められれば選挙権も与えられる。12年以前に香港に移…

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福岡静哉

台北特派員

1978年和歌山県生まれ。2001年入社。久留米支局、鹿児島支局、政治部などを経て2017年4月、台北に赴任した。香港、マカオのニュースもカバーする。