「支持者に利益還元」何が悪い? 桜を見る会など「私物化」どこまで許される 菅原琢さんがご意見募集

菅原琢・政治学者
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安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、招待者との記念写真に納まる安倍首相(右)=東京都新宿区の新宿御苑で2015年4月18日、長谷川直亮撮影
安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、招待者との記念写真に納まる安倍首相(右)=東京都新宿区の新宿御苑で2015年4月18日、長谷川直亮撮影

 桜を見る会の問題は、その膨れ上がる予算への疑義から、後援会支持者への優遇、反社会的勢力の招待、疑惑が生じてからの参加者名簿の破棄など新たな問題、疑義が芋づる式に広がり、国政の重大な問題となっています。この問題の発掘と拡散に貢献した共産党の田村智子議員が述べるように、「税金を使った公的行事を後援会行事に作り替え」、「選挙に向けたおもてなし」としてこの行事が「私物化」されたとの指摘は正当でしょう。

 政治プレミアで議論する話題としては巨大になり過ぎている感もありますが、日本の民主主義に関わる重要な論点を含んでいると考え、今回意見募集の対象として取り上げることとしました。

国の予算で特定の人々に利益供与が可能な仕組み

 今回の問題が大きくなった根本には、政権が指名した人々を国の予算で歓待できるという桜を見る会の仕組みがあります。ここに著名人、芸能人に加えて首相や自民党議員の個人的な支持者、後援会員、資金提供者が入り込み、問題が根深く複雑になったわけです。

 このような仕組みがあるおかげで、国の予算で容易に支持者に利益を供与できることになります。無料で歓待を受けるだけでなく、首相との近さをアピールできる、社会的信用を獲得するなど、参加者が得られる利益はさまざまです。これにより歓心や票、政治資金を得られるのであれば参加者と政治家の利害は一致します。国の予算を使えるので、そもそも「害」は小さいでしょう。

 ただ、ここで考えたいのは、こうした形で行うような事実上の支持者への利益供与や政治家の選挙運動はどこまで許されるのかという点です。広く見渡せば、公職に就いた政治家が主体となり、国や自治体の予算を用いて支持者に事実上の利益配分を行ったり、自分たちの選挙運動を行ったりするようなことは数多く見つけることができます。

 田村議員は、桜を見る会は「会の趣旨が変わってきている」とし、元々の「功労・功績を認められて省庁から推薦される正規のルート」からの参加者であれば認める立場のようです。このような「正規化」により今回問題視されたような露骨な支持者優遇は排除されるかもしれません。しかし、こうした行事にその時の政権に近い有力者、有識者がより多く呼ばれることに変わりはないでしょう。

支持者への利益還元が期待される政権交代

 この点を考えなければならない理由としては政権交代があります。誰かの支持を受け、政権に就いた際に支持層に利益を還元するのが政党の使命だとすれば、政権獲得時に支持層優遇と取られる判断を行うことは避けられません。政権与党が支持者に利益を還元すること自体、政権交代と民主主義の自然な帰結です。

 仮に共産党政権が誕生すれば、桜を見る会の人選も自公政権と同じになるはずはないでしょう。もし共産党議員が自公政権と変わらない政権寄りの著名人や資産家と付き合いだとしたら、それこそ政権交代の意味はなく、同党支持者は選挙と民主主義に期待しなくなります。

 政権交代を前提として見た場合、桜を見る会に限らずに政権運営の公私の境界は曖昧です。それどころか、支持者への利益還元という意味で積極的に「公」の「私物化」が求められている側面もあります。無定見に政権運営の「私物化」を批判すれば、政権交代後により些末(さまつ)な判断、選択について「私物化」批判にさらされるでしょう。田村議員が「正規ルート」で公私を線引きしたのは、おそらくこれを予見したためでは……というのは邪推でしょうか。ただ、「正規ルート」であれば桜を見る会に問題が生じないわけではないでしょう。

政治家の公的リソース利用についてコメント募集

 仮に桜を見る会が廃止となったとしても、政治家による国や自治体の予算を用いた事実上の利益供与や選挙運動の類は日本全国に無数にあります。今回の問題は、そうした事例に目を向ける好機です。

 そこで今回の意見募集でも、桜を見る会の問題とその是非に限定せずに、そうした身近な例なども含めてコメントいただければと思います。

 たとえば、市で大規模なイベントを開き、記者会見や開会式などの場で市長がテレビカメラに納まるようなことはよくあります。これを公職の当然の役割とするか、自身の認知度向上のためにイベントを利用していると捉えるか、いろいろな意見があると思います。

 あるいは、観光協会が共催、協賛した祭りの開会式で地元県議にあいさつの場を提供するような例はどうでしょうか。関係者の中に次に議員になりたい人がいるのではないのかと勘繰りたくなりますが。

 そうした事例の紹介でも、どこまで「私物化」が許されるのか議論していただいても構いません。桜を見る会に限らず、政治家が式典などの公的リソースを用いて支持者に利益を還元したり、自身の認知度向上を図ったりするような例について紹介、議論するようなコメントをお待ちしております。

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菅原琢

政治学者

1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、共著「平成史【完全版】」など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」https://kokkai.sugawarataku.net/を運営。