クトゥーゾフの窓から

旧ソ連で広がるラーメン人気 地元の舌に合わせて

大前仁・モスクワ特派員
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Noodle vs Marketing で出されたラーメンの玉子はピンク色だった=大前仁撮影
Noodle vs Marketing で出されたラーメンの玉子はピンク色だった=大前仁撮影

 旧ソ連の国々でも、ラーメンを食べられる機会が増えている。これらの地域で日本の食文化が広がるに従い、ラーメンの魅力が伝わり、地元の人を対象にする店が増えているのだ。これらの国々のラーメン事情に触れてみた。

 「少し分かりにくい場所です」。ウクライナの首都キエフの知人から紹介してもらったのは「Noodle vs Marketing」というラーメン屋だった。外観を見た限りではラーメン屋とは思えない。唯一の手がかりはキリル文字で書かれたPAMEH(ラーメン)の5文字。ドアを開けて半地下へ下りていくと、最初の驚きが待っていた。

 店内はカウンターが5席と、テーブルが数卓。私が訪れたのが土曜日の午後だったこともあり、席を待っている客もいて、ザワザワとした空気が漂っていた。ラーメンのチョイスは、塩、しょうゆ、ミソ、激辛の4種類で、トッピングは20種類にも及ぶ。私はミソラーメンに、もやしなどのトッピングを添えた。

ラーメンを食べる「心構え」も

 カウンターにはラーメンを食べる「心構え」が書かれていたから、つい読んでしまう。「日本人はとても早くラーメンを食べます。でもコンテストではないから、自分のペースで食べてください。ただし他のお客さんが待っていますから、その点は配慮してください」。このような趣旨が書かれており、私は心の中で大笑い。なるほど自分たちでは気がつかないことは多いものだ。日本人は早食いコンテストをするかのようにラーメンを食べているのか。

 割と早く出てきたラーメンを目の前にすると、二つ目の驚きが。中央に添えられた卵がピンク色だった。当然、着色しているのだろうが、どのような意図でピンクにしたのだろうか。半ば驚いたままで、箸を付けたが……。

 細かい評論は避けよう。「これがキエフの人たちが志向している味なのだろう」。これが私の結論だ。ウクライナを含んだロシア文化圏では、スープは少し冷ましてから出されるものだ。辛いものが苦手な人が多く、甘めの味付けが多い。この店のラーメンはこのような傾向を反映していた気がする。麺は太く、歯ごたえがあった。

「ラーメンが一番だ」

 ラーメンを食べ終え、店の人に話を聞きたかったのだが、混んでいる店内を見回すと、そのような勇気を振り絞れない。会計を済まし壁に目をやると、日本の新聞のコピーが目に入った。日本の同業他社の記者がこの店を訪れ、書いたコラムが貼り出されてい…

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大前仁

モスクワ特派員

1969年生まれ。1996年から6年半、日経アメリカ社でワシントン支局に勤務。毎日新聞社では2008年から13年まで1回目のモスクワ支局に勤務。