Social Good Opinion

若者のSNSの世界「政治メディア」はブルーオーシャン

能條桃子・NO YOUTH NO JAPAN 代表
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NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子さん=佐々木順一撮影
NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子さん=佐々木順一撮影

 2019年も残り数週間。振り返ると、4月に統一地方選挙があり、7月に参院選があった選挙イヤーだったとも言えます。

そして、選挙があるたび、若者の投票率の低さが話題になりました。

どうして若者の投票率は低いのか?

 19年7月の参院選は、10代の投票率32%、20代前半は28%と史上2番目の低さとなりました。この20年間、日本の若者の投票率は低下傾向にあり、平均すると20%ほど下がっています。

 大学進学率は上昇傾向にあり、高等教育を受ける人の割合は増えているのにもかかわらず、なぜ投票率は下がっているのでしょうか?これは教育の不備が原因でしょうか。

 もちろん原因のひとつとして、教育現場において政治に関する知識や議論が避けられていることがあると思います。

 日本では18歳には被選挙権が認められていません。18歳にはまだ、そんな能力・経験が足りないだろうということでしょうか。

 しかし、世界では18~20歳の被選挙権が認められている国が多く、私が留学していたデンマークには21歳の欧州連合(EU)の欧州議会議員がいます。デンマークでは学校などでしっかり教育されているから、18歳以上の立候補を問題なく容認できるそうです。この話を聞くと、確かに教育の不備があると思うかもしれません。

 ただ教育以外にも、小選挙区制導入による死票や情報収集方法の変化、都市化による地縁の希薄化など、日本の投票率を保っていた社会のさまざまな変化が低投票率を招いていると感じています。

私が投票に行こうと同世代に訴えるワケ

 現在、私は21歳ですが、初めての投票は3年前の参院選でした。

 日本で初めて18歳選挙権が認められた参院選で、ちょうど18歳だった年代です。

 そのとき、多くの同世代が投票に行っていない現状を知り、とても驚いたとともに、これは解決しなければいけない問題であると感じました。なぜなら、若い世代の投票率の低さの原因を、現状満足だとか、無関心だとか、投票に行かない若者の資質に原因を求めているコメントや分析が多かったからです。私は、投票に行かない友達一人一人を責める気にもなれませんでしたし、彼ら自身に問題があるとも思いませんでした。

 私はその後、どうしても投票率の低さの原因が若者自身にあるとは思えず、何かヒントが得られるのではないかと、若い世代の政治参加を学びにデンマークに留学しました。デンマークは若い世代の投票率が80%を超えています。デンマークの整った教育カリキュラムや同世代の活動拠点の様子などを知り、日本の若い世代の政治参加への土壌不足を感じ、投票率の低さは、若者の資質によるものではないと確信しました。

 でも同時に、若い世代だけが悪いわけではないけれど、「政治家が若い世代に向けた政策を立案してくれないから投票率が低い」と主張したところで、政治家は得票できる政策を掲げるものなのだから、文句だけ言っていても意味がないとも感じてきました。私たち一人一人もこの民主主義の国で生きる小さくとも力を持つ一人一人であるはずで、できることから自分たちで始めなければならないとデンマークで触発されました。

 そして初めての投票であった16年参院選から3年経過した19年7月、デンマーク留学中だった参院選の際に、若い世代の投票率を上げるためにできることはないかと考え、仲間を募り、Instagramを中心としたキャンペーンをはじめました。これが「NO YOUTH NO JAPAN」という活動です。Instagramで選挙に関する情報発信やそもそもの政治に関する知識の共有をしました。

2019年参院選時のNO YOUTH NO JAPANのインスタグラムの一例=筆者提供
2019年参院選時のNO YOUTH NO JAPANのインスタグラムの一例=筆者提供

若者のSNSの世界と政治

 多くの10~20代はSNSを利用していますし、SNSを通じて多くの情報を入手しています。私たちは参院選の際、活動の拠点としてInstagramを選択し、結果1.5万人以上の10~20代にフォローしていただき、10万人以上の方に見ていただくことができました。

SNSで世界は広がるが、一人一人が見ている世界は狭い

 インターネット・SNSが一人一人の力を大きくしたことは間違いないと思います。私たちの選挙に行こうという活動が2週間で広まったことも、インターネットがあったからだったと思っています。

 ですが一方で、それぞれが見ているSNSのタイムラインは、自分がフォローした人からの発信やターゲティングされた広告など、一人一人全く異なるものです。政治に興味がある人のツイッターは政治の話題であふれますが、きっかけがなかった人のツイッターには選挙があるときも全くもって政治の話は流れてこず、選挙があることに気付かずにすぎることもあります。

 写真などが中心のInstagramしか利用していない10~20代も増えているように感じます。そうするとなおさら、選挙があっても、政治の話など一切入ってきません。

 私たちがInstagramでチャレンジしているのは、普段政治の話が一切生活に入ってこない人たちにどう入り口をつくるかということです。

SNSで一人一人が周りの人たちに影響を与えられる可能性をもつ

 一人一人の見ている世界は細分化され、分断がありますが、それぞれの小さな世界で相互に影響を及ぼしあえるようになったということは、SNSの功績であるとも感じています。

 テレビで「投票に行こう」とみるより、身近な友達や憧れているインフルエンサーの「私は投票に行くよ」っていう言葉の方が響くのです。一人一人が身近な一人一人に影響を与えあって、小さくも確実な変化を起こせることがあると思っています。

若者の政治参加を言葉だけのムーブメントから、カルチャーに

 16年の参院選、はじめての18歳選挙権が認められた年で報道も公教育での扱いも多かった。でも、3年たった今年、定着していないように感じられました。

 わたしたちのInstagramの活動も、一部の間では拡散していただきムーブメントになったようでしたが、選挙が終われば、何事もなかったように日常に戻ります。

 選挙の時のムーブメントだけでは、「わたしたちの生きたい社会をつくれる」という認識は生まれません。選挙での投票は政治参加の一部の形です。どう普段の生活で市民として政治に関われるのか、試行錯誤していくつもりです。

 そして投票率についても、これだけ低投票率が常態化している近年、目先の選挙に行こうムーブメントで投票率が上がるとは思えません。知識も情報も機会も成功体験も足りていないと感じます。

 でも文句を言っていてもどうしようもないですし、私自身、「若者の声で社会が変えられる」と思える日本に少しでも変化を起こしたいので、仲間とともに活動を続けていきます。「NO YOUTH NO JAPAN」つまり「若者なくして次の日本なし」と胸をはって言えるような社会を夢見て。

能條桃子

NO YOUTH NO JAPAN 代表

1998年生まれ。NO YOUTH NO JAPAN 代表。2019年7月参議院選挙でInstagramメディア(https://www.instagram.com/noyouth_nojapan/
)を開設し2週間で1.5万人のフォロワーを集める。若者の政治参加、教育や社会制度を学びにデンマークに留学し、19年10月帰国。若者の政治参加を日本でカルチャーにすることを目指している。慶應義塾大学経済学部4年(今年度休学中)