未婚でもひとり親なら同じ大変さ 差別より支援を

稲田朋美・自民党幹事長代行
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稲田朋美氏=宮間俊樹撮影
稲田朋美氏=宮間俊樹撮影

 昨年の税制改正(2019年度税制改正)で、配偶者と離婚・死別した人の所得税を軽減する「寡婦(夫)控除」の対象に未婚ひとり親も含めるという問題が自民党の反対で見送りになった。

 「伝統的家族を崩す」という理由だという報道を見て、違和感を覚えた。私も伝統的家族や法律婚を大切にする立場だけれども、なぜそれが未婚ひとり親を支援しないことになるのか、わからなかった。

 事実婚が増えるからという理由があげられていたが、従来の制度では離婚した女性が同じ人と事実婚をしても寡婦控除の対象になる。まるで偽装離婚を推進するかのような制度だ。

 そんな制度にしておいて未婚のひとり親にだけ「不道徳」とか「ふしだら」などと批判し、「事実婚が増えるから」などと言うこと自体、矛盾している。

 私が共同代表を務める「女性議員飛躍の会」でNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長に話を聞いた。「全く同感なので、応援したい」と申し上げたら、赤石さんには「自民党の保守的な議員の稲田さんが賛成してくれるなんて」と驚かれた。

 赤石さんらからは、高等教育無償化を巡り、寡婦控除の有無で授業料減免や給付型奨学金で差がつき、同じ年収205万円の母子世帯でも約54万円の差が出るという資料をいただいた。子どもには全く責任がないことで54万円もの差がつくのは大きい。とてもわかりやすい話で、私もツイッターに書き、いろいろな場面でこの金額を大きく主張した。

 赤石さんらが自分で計算をして厚生労働省にも確認したという。我々ではなかなかここまで思いつけない。当事者だからこそ気がつけたのだと思った。

 他にも気づかされることがたくさんあった。たとえば年末調整の書類を出す際にも児童扶養手当の欄にチェックをする必要がある。周囲に分かってしまう。また、児童扶養手当をもらう際には経緯を担当者に詳しく説明しなければならず、苦痛だという。聞かなければわからないことだった。聞かせてもらったことが自分の力になり、やらなければならないという気持ちにつながっていった。

 11月17日に飛躍の会の有志で甘利明税制調査会長に申し入れをし、前向きな回答をいただいたが、その後もさまざまなハードルがあった。

 自民党内では一時、未婚ひとり親も対象にするが、児童扶養手当の支給対象となる年収365万円(年間所得230万円)以下の世帯に制限すべきだとの案が浮上した。

 私は税調総会で意識的にこの問題に触れ「児童扶養手当の支給対象に限ると年間所得500万円以下を対象とする寡婦控除との差が大きくなり、新しい差別を生む」と反対する発言をした。約10人が発言したが、みな未婚ひとり親であるという理由で差をつけるべきではないという内容だった。

 ところが、その後も伝統的家族のあり方に配慮するという理由で、児童扶養手当の支給対象に限るという案が消えない。総会での議論を無視しているし、党内民主主義にも反するという思いがあって署名集めを始めた。最終的には自民党だけで144人の署名が集まった。

 党内には「段階的に進めばいいのだから、今年は児童扶養手当の対象で切るということで妥協しよう、また来年チャレンジしよう」という意見もあった。

 しかし私は納得できなかった。児童扶養手当の対象で制限されるならやっても意味がないぐらいの気持ちだった。男性議員から「税制を感情でやってはだめだ」と言われたこともある。女性が言うと「感情」になるのだろうか。感情ではなく正しいことをやっていると確信していたので揺るがなかった。

 党内の反対意見を聞いていると、どこかちょっとおかしい。「未婚で子ども…

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稲田朋美

自民党幹事長代行

1959年生まれ。2005年衆院初当選。行政改革担当相、防衛相、自民党政調会長などを歴任した。衆院福井1区、当選5回。自民党細田派。