住民投票、市長リコール目指す
横浜市が誘致を正式表明したカジノ(IR、カジノを含む統合型リゾート施設)に断固反対している。
阻止するために住民投票、市長の解職請求(リコール)、そして2021年夏の市長選でカジノ反対派の市長を当選させるという3段階を考えている。
横浜市の場合、住民投票の請求には約6万人の署名、リコールには約49万人の署名が必要で、それを2カ月間で集めなければならない。このため、この11月から市民団体を設立し、準備段階として署名を集めていただける方(受任者)を集める活動を開始した。来春ごろの署名開始を目指している。
マイナスのコストをなぜ試算しないのか
現在でもギャンブル依存症の患者が日本には約320万人いると言われ、先進国では最も多いとされている。カジノの影響は既存のパチンコや競輪、競馬、競艇などの比ではない。
韓国視察の際、ギャンブル依存症対策センターの所長の話を聞いたが、カジノは他のギャンブルと比べて依存症になる率が非常に高く、10人のうち7人までが依存症になると話していた。
米国のニューハンプシャー州でカジノ導入を検討した際の試算では、依存症の患者1人あたり、50万円超のコストがかかるという。仮に320万人の依存症患者が1000万人になれば5兆円のコストだ。
政府も横浜市も経済波及効果が何千億円などということはしきりに強調する。しかしマイナスのコストの話は全くしない。どんな事業でもプラスとマイナスの費用対効果を分析するのは当たり前のことなのに、カジノに限ってはプラスの試算しかない。韓国では、カジノ導入で2兆円の効果はあったが、一方で、対策経費などで7.7兆円のコストがかかったという試算もある。
反社会的な勢力と結びつく
賭博は古来、反社会的な勢力と結びつく。そして周囲に風俗店やヤミ金融を発生させる。
韓国のカンウォンランドを視察したが、自殺率トップで風俗店と質屋が建ち並ぶ「奇怪な風景の街」として韓国では有名になったという。炭鉱閉山後の地域振興の目玉として誘致したものの、人口は15万人から3.8万人に激減し、あまりの風紀や治安の乱れに小学校までが隣町に移転するほど。地元自治体の職員は「青少年に顔向けできない」と嘆いていた。
カンウォンランドのカジノの社長も「100万都市(大都市)から車で2時間半以上離れた所ということで認められたが、横浜のような大都市に作れば、規制や監督をすればよいという次元を越えて大変なことになる」と話していた。
シンガポールの成功は「明るい北朝鮮だから」
シンガポールは成功例とされているが、「明るい北朝鮮」と称されるように、徹底した「規制・取り締まり・監督国家」だからだ。個人情報は広範に国がにぎり、組織的犯罪集団もいない。安倍晋三首相が視察するなどして、カジノが「成長戦略の目玉」としてもてはやされるきっかけに…
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