
米下院はウクライナ疑惑に関しトランプ大統領を弾劾訴追する決議案を可決しました。
理由はトランプ氏が来年の大統領選を有利にするために、ウクライナに「バイデン前副大統領親子の捜査を開始する」と公言するよう要求したなどの疑惑ですが、背景にはトランプ政治そのものを巡る米国社会の深い亀裂があります。
孤立主義の伝統

もともと米国には孤立主義の伝統があります。1940年に結成され、欧州への不介入をとなえた団体の名称は「America First Committee」(AFC)でした。
AFCは大西洋単独無着陸横断飛行で有名な米国の英雄、リンドバーグが関わったことで影響力を持ちましたが、一方でナチスに同情的な姿勢を示したこともあり、米国では苦い記憶も呼び起こす名称です。
トランプ氏の掲げる「アメリカ・ファースト」は単に自国第一主義という意味だけにとどまらず、対日戦争も含め、米国が先の大戦で「民主主義の大義」を守るために闘った理想と対置される言葉です。トランプ氏がこの言葉を標語にしたのは決して偶然ではありません。
在日米軍駐留経費や在韓米軍駐留経費をめぐって大幅な増額を要求しているのも、民主主義という価値観を共有することの重みを十分に認めていないためです。
国内ではヒラリー・クリントン元国務長官、そして今回のバイデン氏のようにあらゆる手段を使って政敵を攻撃します。そして「ディープ・ステート」(陰の国家)という陰謀論を持ち出して国内を不安に陥れようとしています。
陰謀論で国内の対立をあおる
「ディープ・ステート」という言葉は最近は日本でも聞かれるようになりました。格差が拡大し不満が高まると、その矛先を探してこうした通俗的な陰謀論が左右双方から出現します。
トランプ氏は、大衆が強い指導者を求める不安定な状態を保つことが大統領選勝利のカギだと考えているのでしょう。その意味ではトランプ氏の政策は外交も含めて、米国内の対立と分断をあおり続けるという一点に集中しているのかもしれません。
「アメリカ・ファースト」は日本国憲法を含めた戦後日本の成り立ちとは本質的に相いれない言葉です。AFCの不介入主義は実質的にはナチス支援だったことを忘れてはなりません。(政治プレミア編集部)
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