安倍首相の有終の美

田中秀征・元経済企画庁長官
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田中秀征氏=宮武祐希撮影
田中秀征氏=宮武祐希撮影

 首相在任記録では前人未到の境地に入っている安倍晋三首相だが、本人としてはもちろんそれだけではもの足りないだろう。また、われわれ同時代人もこのままでは肩身の狭い思いをしかねない。

 できれば、吉田茂(講和)、岸信介(日米安保)、佐藤栄作(沖縄返還)、田中角栄(日中国交回復)のような大宰相と同様の際だった歴史的業績がほしいところだ。

 安倍首相は自分の歴史的使命を憲法改正、北方領土返還、拉致問題の解決などに置いてきたようだが、いずれも一筋縄ではいかない難題だ。

 それに、先人の歴史的業績は、たまたま“時務”すなわち時代の要請として機が熟していたものがほとんどだから、特に安倍首相自身の責任を問われるものではない。

 首相の(自民党総裁としての)残りの任期は2年弱。この間に東京五輪・パラリンピックもある。常識的に見て、この間に大風呂敷を広げるのは賢明ではない。大事業への中途半端な取り組みを始めるより、後…

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田中秀征

元経済企画庁長官

1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部卒業。83年衆議院議員初当選。93年6月に新党さきがけを結成し代表代行に就任。細川護熙政権の首相特別補佐。第1次橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官などを歴任。福山大学教授を30年務め、現在、福山大学客員教授、さきがけ新塾塾長。主な著書に「日本リベラルと石橋湛山――いま政治が必要としていること」(講談社)、「判断力と決断力――リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)、「自民党本流と保守本流」(講談社)、「平成史への証言」(朝日新聞社)。