激動の東アジア -2020年の展望 中国は「変えられる」

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 2020年の東アジアは大きく揺れる。1月の台湾総統選挙、4月の韓国総選挙、東京五輪・パラリンピックを挟み9月には香港立法会選挙、そして11月3日に米大統領選が控える。米大統領選は2月のアイオワ州党員集会に始まり3月の14州予備選挙がおこなわれる「スーパーチューズデー」、そして夏の共和・民主両党の全国党大会での候補者選出を経て佳境に入る。

 米国の国際関係は内政の延長で決定される面が強くなってきた。東アジアもその例外ではない。国内政策に対する激しい反発を受け、トランプ大統領は対外政策で大きな実績をあげようとするだろう。米中の戦略的競争関係はどこに向かうのだろうか?

 北朝鮮核問題は北朝鮮が一方的に宣言した非核化交渉のデッドラインである年末を越え、どうなるのだろう? そして日本の対米関係は今のままで良いのか。米国発の地政学リスクは東アジアをどこに導くことになるのか?

中国の危機と米中関係の緊迫化

 中国は重大な危機を迎える。20年は習近平国家主席が公約した10年比国内総生産(GDP)及び1人当たり国民所得倍増の最終年で、最低でも5.8%の成長率が必要となる。この成長率達成に中国は躍起となろう。まだ内需の余裕はあるし米中貿易戦争の第1段階の合意が成ったことに伴い輸出の拡大が一定程度期待できようが、それでも厳しい局面だ。

 トランプ大統領が引き続きハイテク分野の貿易や投資を巡り圧力を強化していくことは当然予想される。さらに香港のデモは続こうし、これに人民解放軍を投入すると国際社会の強い反発を受けざるを得ず、当面は香港政府を前面に立てマネージしていくことしか道はない。

 香港住民は暴力的デモより、区議会選挙に示されたとおり選挙を通じて民主派を増やしていくことを追求しようし、9月の立法会の選挙は限定的とはいえ民主派を拡大する機会となりうる。もしさらなる混乱が続いていけば中国政府は柔軟、強硬いずれの路線をとるか選択を迫られることになる。

 香港情勢は既に台湾に影響を与えており、来年1月の総統選でも独立傾向の強い民進党の蔡英文総統の再選が確実視されている。再選された蔡総統は香港情勢を見ながら中国をけん制していくだろうし、米国の対台湾政策が問われることになる。

 トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」の見地から対中貿易不均衡の是正を優先してきたが、米国内では保守・民主の両党とも対中戦略的強硬論で固まっており、香港・台湾・ウイグル情勢いかんでトランプ大統領は大統領選をにらみ圧力を増強していくことになる。

 中国は改革・開放路線を進めて40年の時が経過したが、この間米国との協調を基本としてきた。他方、香港、台湾、ウイグル問題や共産党が主体となるいわゆる国家資本主義を「核心的利益」と捉えており、状況の推移によっては国内の反米ナショナリズムをあおり、米国との対決路線を選ぶ危険性も排除されないだ…

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。