自衛隊のリアル

元・陸自衛生官の「戦傷医療」教科書が売れているワケ

滝野隆浩・社会部専門編集委員
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照井さんによる止血帯止血法の実演・実習。
照井さんによる止血帯止血法の実演・実習。

 救命法の専門教科書「イラストでまなぶ! 戦闘外傷救護(増補改訂版)」が重版を重ね、異例の売れ行きを見せている。元陸上自衛隊衛生官で有事医療ジャーナリストの照井資規(てるい・もとき)さん(46)が中心となってまとめた。テロや大災害、大規模事故といった一度に多数の被害が広範囲で出る状況の対処法をリアルに、しかも「萌え」系のイラスト付きで解説しているのがウケているという。

 東京都内の会議室で行われた講習会は、休日にもかかわらず10人ほどが集まり、照井さんの話に聴き入り、実践的な止血法などを学んでいた。若い消防・自衛隊関係者、中には中年に近い医師の姿も。内容はいわゆる「市民講座」的な救命法ではない。銃弾による銃創、爆発物による爆創、刃物による刺傷など、日本人にとって非日常的な現場での実践的な知識とスキルの取得を目指している。ラグビー・ワールドカップは無事に終了したが、2020年には最大のイベント、東京オリンピック・パラリンピックが待っている。これまでにない事態に対処しなければ、という思いが参加者全員にあるようだ。

 米軍が使用している最新式の止血具が紹介される一方で、緊急対応として「ありあわせのもの」で素早く対処する方法も示される。たとえば、多数の熱中症患者が出た場合。市販の経口補水液(ORS)があればいちばんいいが、即時に大量には用意できない。そこで簡単につくれるORSとして、1リットルの水に、塩4グラム、砂糖40グラムを溶かして作ればいいとされた。照井さんはこのことを「水1リットルに塩ひとつまみ、砂糖ひとつかみ、と覚えてください」と説明した。身近なものを何でも利用する。実践的な講習会だった。

 教科書の冒頭に出てきて、講義の時間でも強調されたのが、初期対応者が身に付けるべき「SABACA(サバカ)」の基本理念だ。次の三つだ。

 SA Self-Aid    自分で手当て

 BA Bu…

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滝野隆浩

社会部専門編集委員

1983年入社。サンデー毎日記者、前橋支局長などを経て社会部編集委員。著書は「宮崎勤精神鑑定書」「自衛隊のリアル」など。