麗しの島から

台湾総統選 選挙という「お祭り」を楽しむ人々

福岡静哉・台北特派員
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太鼓や銅鑼を鳴らす男衆に先導されて台湾の神様「七爺八爺」が登場し、選挙集会は熱気を帯びた=台北市で2019年12月28日、福岡静哉撮影
太鼓や銅鑼を鳴らす男衆に先導されて台湾の神様「七爺八爺」が登場し、選挙集会は熱気を帯びた=台北市で2019年12月28日、福岡静哉撮影

 2020年1月11日に投開票される台湾総統選に向け、各候補ともラストスパートに入った。

 台湾で開かれる選挙集会は、立候補者の政策を有権者に伝えるだけでなく、お年寄りから子供連れまで幅広い世代が楽しめる工夫がされている。演出も個性的だ。台湾ならではの「選挙祭り」を現地から報告する。

焼き鳥や肉まんの屋台が並ぶ選挙集会

 12月14日、南部・台南市であった大規模な選挙集会。焼き鳥や肉まん、ジュースなどを売る露店が立ち並び、周囲の路上は日中から台湾名物の「夜市」と化していた。

 「総統の写真入り時計、今ならお買い得だよ!」「この帽子は総統のサイン入りだ」。再選を目指す蔡英文総統(63)の写真などが入った関連グッズも並べられ、支持者らが列をなしていた。

 上着、Tシャツ、マグカップ、腕時計などにも蔡氏の写真やサインがあしらわれ、蔡氏をかたどったぬいぐるみまである。

 「蔡グッズ」を売っていた南部・高雄市の林宏宇さん(49)は「蔡総統のグッズはよく売れるよ。商売が繁盛して蔡総統の応援にもなり、一石二鳥だ」と笑った。選挙が無い時期は夜市でジュースなどを販売しているという。

 会場を奥に進むと「台南競総成立園遊会」と記した看板が掲げられた広場が見えてきた。台南の選挙対策本部が成立した記念の「お祭り」という意味だ。広場に入ると、台湾の伝統的な人形劇「布袋戯(ほていぎ)」が上演され、お年寄りや子供たちが熱心に見入っていた。

 ここにも露店が立ち並ぶほか、動物とのふれあいコーナーなどもあり、移動式トイレも完備されている。子連れで来ていた台南市の彭さん(34)は「子供を遊ばせながら演説を聴けるので便利です」と話した。

 集会が始まった。台湾の選挙集会は前座も独特だ。この日は若者らが舞台に上がりラップの音楽を披露した。焼き鳥を手にしたお年寄りや民進党の旗を手にした若者らが軽快な音楽に体を揺らし、手をたたいている。

「台湾語」で演説する蔡総統

 立法委員(国会議員)らが相次いで演説した後、熱気が最高潮に達したところで、蔡総統が会場の後方に登場した。支持者にもみくちゃにされながらステージに上がった蔡氏は開口一番、台湾語で語りかけた。「ダッゲーホウ!」(皆さん、こんにちは)。

 台湾語は、中国本土で話される標準中国語(北京語)とは異なり、中国南部・福建省に由来する。中国語が母語の人にも台湾語は聞き取れない。17世紀以降、福建省などから移住した「本省人」と呼ばれる人々が主に話す言語だ。台湾では日本統治時代(1895~1945年)、日本語教育が行われたが、台湾語は庶民の言葉として使い続けられた。

 その後、蒋介石率いる国民党が中国共産党との内戦に敗れ、1949年、台湾に逃れた。国民党政権は台湾を独裁統治し、今度は台湾人に中国語の教育を徹底した。蒋介石と共に台湾に来た中国語を母語とする「外省人」がエリート層…

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福岡静哉

台北特派員

1978年和歌山県生まれ。2001年入社。久留米支局、鹿児島支局、政治部などを経て2017年4月、台北に赴任した。香港、マカオのニュースもカバーする。